【2月27日 AFP】陸上競技指導者のアルベルト・サラザール(Alberto Salazar)コーチが、「ほぼ間違いなく」反ドーピングの規則を破っていたとする文書がリークされる中、同氏に師事する選手の一人で、五輪で2大会連続の長距離2冠を達成している英国のモハメド・ファラー(Mohammed Farah)が26日、自身は「クリーンな選手」だと強調した。

 この問題は、米反ドーピング機関(USADA)がまとめたとされる文書をハッカー組織ファンシー・ベアーズ(Fancy Bears)が入手し、さらに英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)が、その内容を報じたことから始まった。

 同紙によれば、サラザール氏は、アミノ酸の一種L-カルニチン(L-carnitine)を主成分とした調査用のサンプルを、米オレゴン(Oregon)州にある自身のチームの拠点でファラーや米国の一流選手6人に投与し、そしてUSADAは当該の米国選手を「ほぼ間違いなく」規則違反だと結論づけたという。USADAはこの報告書を作成したことを認めている。

 L-カルニチンはもともと人間の体内にある物質で、心臓や筋肉の異常を治療するためにも使われる。禁止薬物ではないが、6時間以内に50ミリリットル以上を摂取することは禁じられている。

 この報道を受けてファラーは声明を発表し、「私はクリーンな選手であり、物質、手法、服用のどの面でも、規則を破ったことは一度もありません。しかし遺憾なことに、一部のメディアは明白な事実を無視して、私と不適切な薬物の使用を結び付けようとしています」と話した。

「何度も言っているように、クリーンな競技環境のためであれば、われわれはあらゆる努力を惜しむべきではありませんし、規則を破った者が罰せられるのは100パーセント正しいことです」

「サンデー・タイムズが私にどんな恨みがあるのかはわかりませんが、こうした主張は極めて不公平です。私が何も間違ったことをしていないのは、彼ら自身の報道で明らかです。USADAや他の反ドーピング機関が不正の証拠を持っているのなら、自ら発表して措置を講じるはずであって、メディアに裁判官や陪審を任せようとはしないでしょう」

 サンデー・タイムズによれば、サラザール氏はL-カルニチンの「『驚くべき』パフォーマンス向上効果」に興奮し、薬物使用を告白する前の元自転車競技選手、ランス・アームストロング(Lance Armstrong)氏に対して、「ランス、すぐに電話をくれ!試したがこいつはすごいぞ!」と呼びかけたという。

 2016年3月の作成されたというこの報告書には、サラザール氏とチーム医師のジェフリー・ブラウン(Jeffrey Brown)氏が「二人で共謀し、場合によっては違反と取られかねない」危険な医薬の処方と医療行為を行い、選手のパフォーマンスを高めようとしていたとする「十分かつ説得力のある」証拠が見つかったと記載されているという。

 同紙によれば、ファラーは過剰になりかねない量のビタミンDの摂取を説き伏せられたという。ビタミンDは禁止物質に指定されてはいない。

 サラザール氏はサンデー・タイムズに対し、ファラーにはマラソン初挑戦となる2014年のロンドン・マラソン(London Marathon)の前にL-カルニチンを与えたが、その方法は「USADAの指示通り」だったと話している。

 USADAは25日に声明を発表し、問題の文書を作成したことを認めた上で、まだ結論は下していないと述べた。

「確かにUSADAは、とある医師がナイキ・オレゴン・プロジェクト(Nike Oregon Project、サラザール氏のチーム)に関わる選手へ施した治療について、医療行為の認可を行う国内機関からの要請を受け、報告書を作成しました。規則に対する違反があったかは現在も調査中であり、現時点でこれ以上のコメントは差し控えます」 (c)AFP/James PHEBY and Rebecca Bryan