【2月8日 AFP】ドイツのドレスデン(Dresden)で7日、シリア出身のアーティスト、マナフ・ハルボウニ(Manaf Halbouni)さん(32)によるバス3台を縦方向に設置したインスタレーション作品「モニュメント(Monument)」の展示が始まった。シリア・アレッポ(Aleppo)で、狙撃兵からの攻撃を避けるために設置されたバリケードを想起させるこの作品は、右派ポピュリスト団体の激しい抗議の的となった。

 旧東ドイツに位置するドレスデンでの展示は、ディルク・ヒルベルト(Dirk Hilbert)市長の言葉で公式に始まったが、これにイスラム嫌悪の反移民団体「西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人(PEGIDA)」のメンバー約100人が、非難の声を浴びせた。

「モニュメント」は、シリアの政府軍に包囲されたアレッポ東部で反体制派が設置したバリケードに着想を得たものだ。反体制派は、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領政権の狙撃兵から身を守るため、バスを地面に対して縦方向に設した。

 作品は、シリア国民の惨状を喚起させることを目的にしているが、それは同時に全ての戦争の犠牲者の苦悩をも表すものでもある。

 作品は2台のクレーンを使って6日に設置された。第2次世界大戦中の1945年2月13~15日に英米空軍のドレスデン爆撃で犠牲となった約2万5000人の追悼記念日を1週間後に控えたタイミングでの設置作業となっていた。

 シリアとドイツの二重国籍を持つハルボウニさんは、作品が象徴するのは「平和、自由、人道」だとDPA通信に語った。

 だがPEGIDAは、同作品を「愚劣」とののしった。インターネットに投稿された匿名の批判はさらにひどく、警察は作品支持者らに向けられた殺人の脅迫について捜査中だ。ヒルベルト市長も警察の警護の対象となっている。

 ヒルベルト市長は7日の演説で、ハルボウニさんが作品で提示しているものは「市にとって重要」と歓迎し、ドレスデンではナチス(Nazi)政権によって「人々は迫害され、辱められ、殺害された」ことを決して忘れてはならないと訴えた。

 ドレスデンでの追悼記念日は、ナチス政権により世界に加えらえた苦しみを思い起こす日である一方、修正主義を掲げる右派団体らにとっては、ドイツこそが外国の侵略の犠牲者と訴える日となってきた。

 作品の展示を受け、右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は政治プロパガンダであり、PEGIDAの支持者を「挑発する」ために仕組まれた「芸術的自由の悪用」だと非難している。(c)AFP/Andrea HENTSCHEL