【2月3日 AFP】メキシコの人々がソーシャルメディアのプロフィール画像を国旗に変え、コカ・コーラ(Coca-Cola)やスターバックス(Starbucks)といった米国製品の不買運動を呼び掛け始めた。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が主張する国境沿いの壁建設計画が、メキシコ人の愛国心に火をつけたのだ。

 ツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)、インスタグラム(Instagram)には、反トランプを訴えてメキシコの団結を示すためのハッシュタグ「#WeAreAllMexico」や「Viva Mexico!(メキシコ万歳!)」という投稿が目立つ。エンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領の報道官や政権閣僚らもツイッターのプロフィール画像を国旗に変えた。

 1月上旬に支持率が12%に落ち込んだペニャニエト大統領自身、この愛国心の高まりに注目しているようだ。大統領は1月30日、国民に向けたビデオメッセージで「国家の団結」をたたえ、「今日ほどメキシコ人であることを誇りに思ったことはない」と語った。

 さらに、そうした愛国心は外交戦略における「礎でなければならない」とし、メキシコの「威厳と独立」を米政府から守り抜くと約束した。

 ペニャニエト氏とトランプ氏は1月27日に電話会談を行い、国境沿いの壁建設をめぐって協議を続けていくことで一致した。だが米テキサス(Texas)州タールトン州立大学(Tarleton State University)で米メキシコ関係を専門とするヘスス・ベラスコ(Jesus Velasco)准教授は、すでに亀裂が生じており「関係修復にはしばらくかかるだろう」と指摘する。

 1月31日には米首都ワシントン(Washington D.C.)で両国の首脳会談が行われる予定だったが、トランプ氏が壁建設の大統領令に署名し、費用をメキシコに負担させるとの主張を繰り返したため、ペニャニエト氏は会談の中止を発表。この対応をメキシコ国民は称賛した。

 ただし、ペニャニエト大統領の支持率回復は限定的だった。日刊紙エクセルシオール(Excelsior)が1月31日に掲載した世論調査では、支持率は16%にとどまった。

 一連の動きをめぐり、メキシコ国立自治大学(National Autonomous University of Mexico)で外交を専門とするダマソ・モラレス(Damaso Morales)氏は、「メキシコは他国から攻撃されると愛国主義的になる傾向がある」と語る。

 他方で、英ロンドン大学経済政治学院(LSE)でメキシコの政治・安全保障を専門とするハビエル・オリバ(Javier Oliva)氏は、メキシコのナショナリズムは単なる「反発」であり、脅威にはならないと指摘。そして「トランプ氏に感謝しなければならないことの一つは、世界中の人々がメキシコの位置を把握できたということだ」とコメントした。(c)AFP/Yemeli ORTEGA