【1月27日 AFP】全豪オープンテニス(Australian Open Tennis Tournament 2017)の女子シングルスで準決勝敗退に終わったミリヤナ・ルチッチ(Mirjana Lucic-Baroni、クロアチア)は、精神的な疲れは残ったものの、長い低迷を抜け出して勝ち進んだ自身の快進撃に誇りを抱き、コートの景色を自撮り(セルフィー)して大会を後にした。

 34歳のルチッチは、26日に行われた準決勝で大会第2シードのセレーナ・ウィリアムス(Serena Williams、米国)に2-6、1-6で屈し、わずか50分間で夢のひとときに終止符を打たれた。敗れはしたものの、ルチッチはロッド・レーバー・アリーナ(Rod Laver Arena)で健闘をたたえる拍手を浴びながらスマートフォンで撮影し、この瞬間を存分に味わっていた。

「とにかく最高の瞬間で、私にとって特別でした。自分のスマートフォンに残しておきたい。大勢の観客で埋め尽くされたコートは、本当にとても素晴らしい景色でした」

 18年前の1999年に、10代で四大大会(グランドスラム)のベスト4入りを果たした元天才少女は、その後、キャリアに影響を及ぼす深刻なプライベートの問題に直面した。ウィリアムス姉妹と同じ時期の1990年代後半に頭角を現しながらも、父親の虐待から逃れることを余儀なくされ、ルチッチにとってテニスは二の次になってしまった。

 このストーリーはテニスファンだけでなく、ルチッチに刺激を受けたと話すセレーナを含め、ライバルたちの心を熱くした。そして今大会では、脚に故障を抱えながら女子ダブルスにも出場し、アンドレア・ペトコビッチ(Andrea Petkovic、ドイツ)とのペアで準々決勝まで勝ち進んだ。

■「大きなモチベーション」

 ルチッチは「タフな大会でした。ここで10試合ほど戦ったと思います。クレイジーな毎日で、休みが一度もありませんでした」と振り返っている。

「精神的にも疲れ果てました。本当に信じられなかったです。身体的にも毎日プレーしていたので、脚の疲れが取れませんでした。何をするのも大変でしたが、それを言い訳にはしたくありません」

 これから夫のダニエレ(Daniele)さんの元に帰るルチッチは、今大会だけで82万オーストラリアドル(約7000万円)を獲得し、2000年から2012年までの間にシングルスで手にした賞金総額よりも多く稼いだ。

 父親から逃れるため、母親や兄弟とともにクロアチアから米国に脱出したあと、2003年から2010年までの間はテニス界のトップレベルから脱落したルチッチは、長い困難を乗り越え、今大会で再び大輪の花を咲かせるという夢をかなえた。

「自分を誇りに思います。シングルスとダブルスの両方で、素晴らしい2週間を過ごしました。シングルスでは4強、ダブルスでは8強に入りました。毎回、絶対にサインするつもりでいました」

 今回のメルボルン(Melbourne)での快進撃により、ルチッチはさらなる成功を目指し、練習のコートに戻りたくてうずうずしているという。

「とてもモチベーションが上がっています。理学療法士やみんなから『もう大丈夫、あとは休んで脚を治しなさい』と言われていますが、練習したくてわくわくしているんです。明日ではなくとも、数日中には戻りたい」

「今大会のことは、大きなモチベーションになっています。これからもっと練習に励みたい。この成功と調子を持続して、楽しみながら前進していきたいです」 (c)AFP