【1月26日 AFP】ニュージーランドのパスポートは大金を積んでも買えない――ビル・イングリッシュ(Bill English)NZ首相は26日、地震の災害基金に莫大な寄付をした米IT富豪に同国が市民権を売ったのではないかとされる問題について、こう言明した。

 ニュージーランドは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の政権下で米国が破滅に向かった場合の「逃避先」として米国人富裕層が注目していると報じられている。

 こうした中、オンライン決済サービスの米ペイパル(PayPal)の共同創設者で、億万長者として知られるピーター・ティール(Peter Thiel)氏が、要件を満たしていなかったにもかかわらずニュージーランドの市民権を取得したことが明らかになり物議を醸している。

 ニュージーランド政府が今週認めたところによると、ドイツ系米国人のティール氏は2011年6月、前年にニュージーランド南島のクライストチャーチ(Christchurch)を襲った大地震の災害救援基金に100万ニュージーランドドル(約8300万円)を寄付。その2か月後に市民権を取得していた。

 イングリッシュ首相は、ニュージーランド市民権の一般的な取得要件の一つである「直前の5年間のうち70%以上の期間を国内に滞在している」との基準をティール氏が満たしていなかったことを認めたが、市民権の取得が許可されたのはティール氏に「例外的な状況」が確認されたためだと弁明。「例外的な状況」の具体的な説明は避けつつ、ティール氏に市民権を売り渡したのではないかとの批判は「ばかげている」「金持ちなら割り込みできるという話ではない」と一蹴した。

 ティール氏の資産額は、米誌フォーブス(Forbes)の世界長者番付によれば推計27億ドル(約3000億円)に上る。

 ニュージーランドの移民当局によると、同国への移住に関する問い合わせは、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定後と、トランプ氏が米大統領選に勝利した後に急増したという。(c)AFP/Neil SANDS