【12月15日 AFP】(更新)武器や弾薬を大量に製造する工場や車両爆弾を製造するためのベルトコンベヤーと化した街の一角──。イラク軍によるモスル(Mosul)周辺への進攻で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が展開する兵器製造の規模が少しずつ明らかになっている。

 イラク国内の一部地域を掌握してから2年あまり、ISは多岐にわたる高度に組織化されたシステムを構築した。ISのシステムについて専門家らは、他の武装勢力では類を見ないレベルにあると指摘する。

 イラクやシリアの掌握地域で激しい戦闘を繰り広げるISを後方から支え、その脅威を増幅させているのはその兵器製造能力だ。こうした能力に関する最新情報は、ISによる攻撃や計画に対応する上で極めて重要なものとなる。

 モスルの南東約16キロのカラコシュ(Qaraqosh)で、がれきの間を慎重に歩くイラク軍地雷除去兵のハシム・アリさんは、ISが2014年に街を掌握して以降、当時大半を占めていたキリスト教徒らが街からの避難を余儀なくされ、市内の一角が「死の製造ライン」となっていったことを説明した。

 かつては自動車修理工場やトルコ製家具の販売店が立ち並んでいた市内の通りは、ISが使う装甲車爆弾の製造に使われるようになった。市民を殺害し、イラク部隊の進攻に対抗するために使われるこうした車両爆弾を製造するにあたり、この通りはうってつけだった。製造に必要なすべての物が手に入るからだ。

 ある建物で車両を解体し、隣の建物で装甲用の金属板を切り出し、数軒先で爆発物を製造する。そして、少し行った場所で、車両に爆発物を搭載する。これと同じようなことが、ISから奪還した町や村、地区で多く確認されている。AFPはこれまで、ISが既存の社会基盤を解体し、即興で独自の武器工場を設置した多数の現場を取材している。

 ある町では、旧セメント工場に旋盤を使って迫撃砲やロケットを製造していた形跡がみられ、また近くの廃虚と化したガス貯蔵施設では、作りかけのIED(即席爆弾)が散乱していた。イラク軍が迫り、それらを仕掛ける時間がないまま立ち去ったとみられる。