【12月14日 AFP】白血病などの病気を引き起こす可能性があるウイルスに女性が感染した場合、母子感染するまでその女性が死なないようウイルスが致死性を低下させているとする研究結果が13日、発表された。

 科学者の間では長年、白血病などの病気を引き起こす可能性がある「ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)」に感染した場合に男性より女性の致死率が低いのは、少なくともこのウイルスに限っては、女性の免疫機能の方が男性よりも強く働くからだと考えられていた。

 ところが、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された研究論文は、HTLV-1が男性感染者には提供できない機会を悪用するように進化を通じて順応してきたとする新たな証拠を提示している。

 論文の共同執筆者で、英ロンドン大学(University of London)のビンセント・ジャンセン(Vincent Jansen)教授は「このウイルスが引き起こす疾患の悪性度が女性感染者の方が低いのは、ウイルスが母子感染を狙っているからだ」と説明。ジャンセン教授によれば、HTLV-1の母子感染は、出産時または授乳中に起きる可能性があるという。

 比較的単純な遺伝物質を持つ微細粒子であるウイルスがどのようにして感染する宿主の性別を検知、順応しているのか、正確な仕組みについてはまだ分かっていない。

 だが、ジャンセン教授とロンドン大学の共同研究者のフランシスコ・ウベダ(Francisco Ubeda)氏は、同程度に説得力のある説明が他に存在しないことを複雑な数理モデルを用いて示している。

 研究チームは、HTLV-1の発病率と進行について、日本とカリブ海諸国で比較した。

 研究チームの調査によれば、日本では、HTLV-1が致死性の成人T細胞白血病に進行する確率が女性より男性の方が3倍近く高かったのに対し、カリブ海諸国では、HTLV-1が致死型に変異する確率は男女でほぼ等しかった。

 この理由は、乳児の育て方の違いにあると研究チームは推測している。

 日本では、HTLV-1の母子感染経路の一つである母乳による授乳がより一般的に、長期にわたって行われており、このことがHTLV-1の女性感染者の致死率の低さを誘発していると研究チームは結論付けている。(c)AFP