【11月10日 AFP】米大統領選で勝利したドナルド・トランプ(Donald Trump)氏にこの数か月間振り回された国内のニュースメディアは今、今回の選挙戦の報道のあり方について嘆いている──。ジャーナリストたちはなぜトランプ氏の躍進を見抜けなかったのか。トランプ氏に興味を持ったメディアが「無料の宣伝」をしたことが、早い段階で彼を勢いづかせたのか? トランプ氏がメディアを敵対視したことで、メデイアへの不信感が強い国民を味方につけたのだろうか?

 米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)のメディアコラムニスト、マーガレット・サリバン(Margaret Sullivan)氏は、今回の大統領選はニュースメディアにとって「大失態」と表現。「結局のところ、膨大な数の米国の有権者が変化を求めた。彼らはそれを大声で叫んだが、ほとんどのジャーナリストは耳を貸さなかった」と説明した。

 ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙のメディアコラムニスト、ジム・ルーテンバーグ(Jim Rutenberg)氏は、メディアの大半は国民の「複雑な心情」を読み違えたとみている。「一部のみに向けられた回復から取り残され、自分たちの職を脅かしかねない貿易協定に裏切られ、政府と金融界の権力層と主流メディアに見下されたと感じている有権者の大半が抱える激しい怒りを捉えることができなかった」

 トランプ氏とメディアの関係は、彼が異色の候補者として大統領選に出馬した当初から複雑に絡み合っていた。

 サリバン氏は、共和党の予備選までの数か月間、トランプ氏が姿を現すたびにニュースメディアはその姿を捉え、「初期の段階からありのままを大いに露出させた」ことが同氏に有利に働いたと指摘している。

 ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)のクリス・ウェルズ(Chris Wells)教授(コミュニケーション)らが今年行った研究によると、トランプ氏は過激でとっぴな発言をし続けることで自分に注目を集める術に長けており、メディアもそれに乗っかっていったのだという。

 このことについては、ノースイースタン大学(Northeastern University)でジャーナリズムを教えるダン・ケネディ(Dan Kennedy)教授も、トランプ氏は「現代のメディアの環境を公職に就いている誰よりも理解し、自分をスターにするためにそれを巧みに利用することができる」と指摘している。