【10月20日 AFP】東京は、アジアで一番スタイリッシュな都市かもしれない。だが韓国や中国がその後を追い、また日本の有名ブランドが発表の場をヨーロッパに移すなか、東京はファッションウィークをより大きく変えていく必要にかられている。

 18日に開幕した「アマゾン ファッション ウィーク 東京(Amazon Fashion Week TOKYO)」17年春夏コレクションでは、6日間にわたり約50ブランドが新作を発表。「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」「イッセイミヤケ(Issey Miyake)」 「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」をはじめとした日本ブランドはすでに西洋でも知られているが、地元でなく、より認知度が高く、名声あるパリでショーを開催している。東京でのファッションウィーク来場者は、5万人。その数はニューヨークの4分の1であり、ロンドンやパリ、ミラノを下回る。

「ビッグ4」と呼ばれる4大コレクションを経て、東京へとさらなる旅を続ける人は少ない。またその損失を重要視する日本人もあまり多くないようだ。日本のウェブメディア、「ファッションスナップ・ドットコム(Fashionsnap.com)」の調査によると、デザイナーやスタイリスト、エディターを含む日本のファッション関係者221人のうちたった20%が東京のファッションウィークの印象を「面白い」と回答している。

■東京スタイルに集中すべし

 数々の受賞歴を持ち、ミラノを拠点に活動するトルコ人メンズウェアデザイナー、ウミット・ベナン(Umit Benan)はそのすべてを変えたいと願っている。今シーズンはパリコレに参加せず、東京で初のショーを開催した。「みんなで協力して、東京のファッションウィークをより良いものにしなくてはならない」とベナン。

日本のメンズウェアを「ストリートにおけるもっとも洗練されたスタイル」と称するベナンにとって、東京は世界で最もクリエイティブなバイヤーやデザイナー、そして消費者が集う場所だ。「日本のファッションに新たな潮流を起こすためには、自国のファッションウィークに本当に集中する必要がある」と語るベナンも、過去5年間に40回来日するほどの親日家だ。

 ベナンにとって、日本の素材はイタリアに次ぐ品質だという。だがハイファッションに精密さが求められるイタリアと違い、カシミアにナイロンを混ぜるなど、リスクをとる姿勢が日本の強みだと分析する。「イタリア人には、200ユーロの生地にナイロンを混ぜる度胸はない。日本の人々はとても柔軟性があり、創造性に溢れ、自発的でもある。生地を触ると、『オーマイゴッド、なんだこれは?』と驚かされる」

 東京が若手デザイナーの登竜門となっている中、隣のソウルは活気あるストリートスタイルで、上海は商業の中心地として広い関心を集めている。香港発ブランド「ハウス オブ ブイ(HOUSE OF V)」のデザイナー、ビッキー・アウ(Vicky Au)は「私にとって東京は、長い歴史を持つアジア・ファッション中心地」と語る。アウは「アーバン・チル」と名付けた新作を、ニューヨークに続き、東京でも披露した。カナダ系アメリカ人の建築家フランク・ゲーリー(Frank Gehry)からインスパイアされたミニマルでクリーンなストリートルックは、日本人のテイストにもぴったり合う。

■美しい技術への気づき

 アウは香港、中国、台湾、そしてオンラインにショップを構えるが、日本や米国市場が次なるターゲットだ。アウは日本人デザイナー山本耀司を「モダンでアヴァンギャルドなテーラリング」の達人だと崇めている。

 フランスの注目ブランド「コーシェ(KOCHÉ)」のクリエイティブ・ディレクター、クリステル・コーヘル(Christelle Kocher)も山本耀司から多くを学んだ一人だ。今シーズン、東京ファッションウィークにフランスから参加する唯一のブランドであることは特別だと彼女は語る。「日本の文化はどこよりも洗練されている。人々は技術の美しさ、時間の美しさを理解し、美しいものを生み出す」

 アメリカの巨大小売業者である「アマゾン(Amazon)」が、東京のファッションウィークの冠スポンサーになるのは今回が初。それにより、ファッションウィークが刷新され、より大きく輝かしい変化がもたらされることが期待される。

 すでに米国では、アマゾンがアパレル小売分野で最大手。アマゾン ファッションのバイスプレジデントであるジェームズ・ピータース(James Peters)は、その成功を日本でも再現するつもりだと明言する。

 今の東京では、ショーの開催から店頭販売まで半年かかる。しかしアマゾンは、現在ニューヨークで広がっている「シーナウ・バイナウ(今見て、今買う)」形式に日本のデザイナーが取り組む手助けを喜んでしていくという。「もしデザイナーたちが望むのなら、いつでもそうする用意がある」とピータースはオープニングレセプションで語った。(c)AFP/JENNIE MATTHEW