【10月20日 AFP】詩人ポール・ベルレーヌ(Paul Verlaine)が愛人アルチュール・ランボー(Arthur Rimbaud)に向けて発砲したレボルバー式の拳銃が、11月に競売に掛けられる。競売大手クリスティーズ(Christie's)が19日、明らかにした。

 仏文学界で最も有名なこの銃は、ベルレーヌがランボーとの2年にわたる愛人関係に終止符を打つため、1873年に購入したもの。

 ベルレーヌは29歳の時、妻と子どもを捨ててランボーとの生活を始め、英ロンドン(London)でアヘンとリキュールの一種「アブサン」に溺れた。ランボーは当時の生活から「地獄の季節(A Season in Hell)」の着想を得たとされる。

 ベルレーヌはその後、妻の元に戻ることを決意し、一旦ベルギーの首都ブリュッセル(Brussels)に渡ったが、ランボーもその後を追った。

 ランボーが後に明かしたところによると、ホテルの一室にいた2人は激しい口論となり、酒をあおった後で、自暴自棄になったベルレーヌが拳銃を取り出したのだという。ベルレーヌはランボーに向けて2回発砲し、1発がランボーの手首に当たった。それでもなお、ランボーはベルレーヌに関係を続けるよう迫ったとされる。

 その後、ベルレーヌは屋外で拳銃を抜きランボーを脅したため、通りがかりの警察官に身柄を拘束され、懲役2年の実刑判決を言い渡されている。

 ベルレーヌは服役中にカトリックに改宗し、ここで32編の詩を創作した。これらは後に、代表作「叡智(Sagesse)」や「昔と近頃(Jadis et naguere)」に収録された。

 クリスティーズによると、ベルレーヌの銃は没収され、その後個人の手に渡ったという。オークションは11月30日にパリ(Paris)で開催され、落札価格は6万ユーロ(約680万円)と予想されている。(c)AFP