【10月9日 AFP】シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権が、反体制派が支配するアレッポ(Aleppo)への攻勢を強めている問題で、国連安全保障理事会(UN Security Council)は8日、アサド政権による空爆の停止を求める決議案を採決に付したが、アサド政権を支援している常任理事国のロシアが拒否権を発動したため廃案になった。ロシアは停戦を目指す対案を提示したものの、これも否決された。

 決議案はアレッポ上空の軍用機の飛行と空爆の即時停止を要求する内容で、フランスの主導で作成された。アサド政権側が先月攻撃を開始して以来、空爆は激しさを増している。

 採決では安保理15か国のうち11か国が賛成したものの、ロシアとベネズエラが反対した。過去にロシアを支持してシリア情勢をめぐる決議案で拒否権を発動したことがある中国はアンゴラとともに棄権した。

 停戦決議案がロシアの拒否権で否決されたのは5度目。シリアの内戦は約5年続いており、これまでに約30万人が犠牲になっている。

 安保理はロシアが拒否権を発動した直後、同国が対案として提示した決議案の採決を行い、反対9、賛成4、棄権2で否決した。ロシアの決議案は停戦要求の一方で空爆停止に言及しておらず、英国とフランス、米国などが反対した。中国とエジプト、ロシア、ベネズエラは賛成し、アンゴラとウルグアイは棄権した。

 アサド政権の盟友であるロシアと、反体制派を支持する西側諸国との溝は、決議案2件の否決によって深まった。英国のマシュー・ライクロフト(Matthew Rycroft)国連大使は、「今日はロシアにとって悪い日だったが、アレッポの住民にとってはさらに悪い日だった」と語った。一方、安保理議長国であるロシアのビタリー・チュルキン(Vitaly Churkin)国連大使は、決議案の否決を安保理15か国は最初から認識していたとの見解を示し、「こうした時間の無駄は許容できない」と語った。(c)AFP/Carole Landry with Karam al-Masri in Aleppo