【10月4日 AFP】コロンビアの人々は52年間に及んだ内戦にうんざりだと言う。ではなぜ和平合意の是非を問う国民投票では、平和への最大の機会が小差で否決されたのか。 

 予想外の結果となった2日の国民投票の前の大方の予測は、左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」との内戦をどう解決するかをめぐり、コロンビア国民がいかに分裂しているかを見誤っていた。

■コロンビア国民が和平合意に「ノー」を突き付けた4つの理由

1.「免罪」を拒否

 コロンビア当局は、内戦による死者は26万人、行方不明者4万5000人、さらに700万人近くが家を追われたと推計している。だが今回の合意では、大量虐殺、拷問、性的暴行といった凶悪・重大犯罪を除く、一部のFARCのメンバーに恩赦が与えられたり、犯罪を自白した場合には減刑が適用されたりすることになっていた。

 FARCは犠牲者や犠牲者遺族に謝罪しており、遺族と感動的な和解を果たしたメンバーもいる。しかし、2011年に祖母を殺害されたモニカ・ゴンサレス(Monica Gonzalez)さん(36)にとってFARCと政府の合意は手ぬるすぎた。ゴンサレスさんは2日夜、首都ボゴタ(Bogota)北部で投票結果を喜びながら「やり直すチャンスは認める。でも、免罪はない」と語った。

2. 共産主義を拒否

 FARCは農村部の蜂起が国軍によって鎮圧された後、農民による土地の所有と共産主義政権を求め、闘う目的で1964年に結成された。

 キューバで交渉が行われた和平合意では、FARCを市民政治団体に改変し、議会で暫定的な議席を与えようとしていた。しかし、政治理念や倫理的な理由でFARCを拒否する多くのコロンビア国民にとって、これは行き過ぎだったといえる。和平合意反対派のリーダー、アルバロ・ウリベ(Alvaro Uribe)前大統領は、キューバやベネズエラの左翼政権に言及し、この合意によってコロンビアが「カストローチャベス化」すると批判している。

3. サントス大統領を拒否

 9月26日にFARCとの和平協定に署名した時、フアン・マヌエル・サントス(Juan Manuel Santos)大統領は勝ち誇ったように振る舞っていた。しかし、サントス氏の支持率は今年約20%にまで落ち込んでいる。

 反対派は、和平には賛成だが、サントス大統領個人や内戦を自分の手で終結させてやるという同大統領の思い入れの強さに嫌気が差す、と言う。

 辛辣(しんらつ)な物言いで知られる女性議員のマリア・フェルナンダ・カバル(Maria Fernanda Cabal)氏は「和解への動きは継続するが、それは健全な社会の原則に沿ったものであるべきだ。国を強盗やサントスの虚栄心に明け渡すことなどない」と述べた。

4. 国民投票自体を拒否

 2日の国民投票の投票率は37%と極めて低かった。当局は、過去10年間にカリブ海(Caribbean Sea)地域で発生した中で最大規模のハリケーン「マシュー(Matthew )」の通過に伴う豪雨が障害となったと述べた。

 当日、祝賀会を期待してボゴタの集会に参加した賛成派の市民、ホルヘ・シフエンテス(Jorge Cifuentes)さん(55)は「今後どうなるか分からないが、FARCに与えられた条件が大きく影響したのは明らかだ。低投票率も影響しただろう」と語った。(c)AFP/Jordi MIRO Rodrigo ALMONACID