【9月27日 AFP】韓国の首都ソウル(Seoul)の高級レストラン「プム・ソウル(Poom Seoul)」のオーナー、ノ・ヨンヒ(Roh Young-Hee)さんは、賄賂の抑止を目的とした反汚職法が28日から施行されるのを前に客が減り、店をたたむことを真剣に考えている。

 新たな反汚職法の下では、公務員や私立学校の教員、ジャーナリストなどが3万ウォン(約2800円)以上の食事をおごられると違法になる。「ここへ来て予約の数は大きく減っている。法律違反で捕まるのを恐れているからだ。食事の価格帯は色々あるけれど、3万ウォンではきちんとした韓国料理はできない」とヨンヒさんはいう。

 新法案は韓国でまん延している程度の軽い汚職を撲滅しようという最近の取り組みの結果だ。自分の子どもに良い成績をつけてほしい親から教師への賄賂、都合の良い記事を書いてもらうためのジャーナリストへの賄賂、行政手続きを早めてもらうための企業から公務員への賄賂などが対象となる。

 教師、ジャーナリスト、公務員が5万ウォン(約4600円)相当以上の贈答物を受け取ることや、結婚式や葬式の際に10万ウォン(約9200円)を超える現金を受け取ることも禁じられる。

 100万ウォン(約9万2000円)を超える金品などの授受の場合には3年以下の懲役か3000万ウォン(約280万円)以下の罰金が科される。

 この法律に促されて、反汚職メニューを打ち出すレストランも現れた。レストラン「コンドゥ(Condu)」が新しく設けた2万9800ウォン(約2700円)のディナーでは高い国産ビーフの代わりに米国からの輸入ビーフを使っている。また各百貨店は価格の安い贈答品セットを用意し、ゴルフコースのプレー料金も急落した。

 しかし、この新法を警戒する人々もいる。韓国記者協会(Journalists' Association of Korea)は声明を発表し「政府がメディアを飼い慣らすために新法を恣意(しい)的に運用し、通常の報道活動を制限しないようしっかり監視していく」と述べた。

 また、新法が公務員だけではなく、教師やジャーナリストという民間の被雇用者を対象としているのは憲法違反の可能性があるという指摘もある。「反汚職政策学のための韓国協会(Korean Association for Anti-Corruption Policy Studies)」の会長は「罰則は短期的な措置としては効果があるだろうが、長期的には汚職に対する社会の意識啓蒙が大事だ」と述べた。(c)AFP/Park Chan-Kyong