■瀬戸際から引き戻す

 研究について、イスラエル・ヘブライ大学(Hebrew University)哲学・宗教学部のマイケル・シーガル(Michael Segal)学部長は、「スキャン画像の画質の高さは目を見張るものだった」とコメント。「文字の読みやすさは、実物の無傷の死海文書もしくはその高解像度写真と同程度か、それに近かった」と説明した。

 巻物には、各段に18行の文章が書かれているが、当初の1段の長さは35行だった。また他の古代ヘブライ語の巻物と同様に、記されているのは子音のみで、母音は書かれていない。ヘブライ語に母音の記号が導入されたのは、9世紀になってからだ。

「これらの数節では、エン・ゲディ文書のレビ記が、ユダヤ教典の信頼できる原本とされている、いわゆる『マソラ本文(Masoretic Text)』」と、文字と節の分割の両方に関して、詳細のすべてが完全に一致していた。この事実にわれわれは驚いた」とシーガル氏は話している。

 研究チームは、エン・ゲディ文書を解読するために開発した技術が、現在まで未解読のままになっている死海文書群の一部を含む他の巻物に対しても使用できるのではと期待を寄せた。

 論文の共同執筆者で、米ケンタッキー大学(University of Kentucky)情報工学部の学部長のブレント・シールズ(Brent Seales)教授は「損傷と腐食は自然の摂理だが、テキストを消失の瀬戸際から完全に引き戻すことが可能な場合もある」と今回の研究についてコメントしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN