【8月30日 AFP】人類が地球の化学組成や気候に影響を与えたことにより、1万1700年前に始まった「完新世」が終わり、新たな地質年代「人新世(アントロポセン)」に突入しているとする科学者らの学説について、南アフリカ・ケープタウン(Cape Town)で開催中の第35回国際地質学会議(International Geological Congress)で29日、これを正式に採用するかの検討作業が行われた。

 正式に採用されれば、人類の時代とされる「人新世」は、20世紀半ばに始まったと定義されることになる。承認プロセスには、他の3学術団体による同意を必要とし、今後、最低でも2年を要するとみられる。

 専門家35人からなる作業グループは、7年にわたる審議の結果、人新世そのものの認識については全会一致で合意している。今回、公式に登録することをめぐっては、賛成30反対3(棄権2)だった。

 研究チームは、1950年に始まったこの地質年代について、化学物質や社会経済のさまざまな変化を示す幾つかのグラフを見れば、主な特徴である「大きな加速」が明確に示されていると説明。その対象としては、二酸化炭素やメタンガスの大気中濃度、成層圏のオゾン濃度、地球の表面温度や海洋の酸性化、海の資源や熱帯林の減少、さらには人口増加や大規模ダムの建設、国外旅行の流行などがあるとした。これらはすべて、20世紀半ばごろに大きな変化が見られ始めた。

 地質年代区分は、地層や氷床などの痕跡を基に定められるが、「人新世」については、その痕跡を示すことが難しくないと科学者らは考えている。例えば世界各国陸海の地層でみられるマイクロプラスチックや、氷床コアの分析にみられる大気中のCO2濃度の上昇などがそれに当たるという。

「人新世」という言葉は、ノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェン(Paul Crutzen)博士が2002年に提唱し、環境問題専門家らがそれに倣うようになった。

 だが一方で、これに疑念を抱く科学者らもいる。その主な理由は、新たな地質年代とするには十分な年月が経過していないためだという。

 今回、学会に発表された「人新世」については、その始まりの時期をめぐり意見が割れている。最も多かったのは核兵器の使用による痕跡をシグナルとするとの意見だった。(c)AFP/Marlowe HOOD