【8月29日 AFP】高さと力強さを兼ね備えた圧巻のリフトやジャンプで、ロシアが強さを見せつけたリオデジャネイロ五輪のシンクロナイズドスイミング。――そのロシアを含めた大会のメダリストたちは現在、男子のシンクロ参入に好意的な姿勢を見せている。

 五輪で男子選手が参加しないのは、シンクロナイズドスイミング、そして新体操のわずか2競技のみ。この変則的な実施方法には、選手からも疑問の声が上がっている。

 シンクロナイズドスイミングは、1940年代から50年代に活躍した「ハリウッドの人魚」こと女優のエスター・ウィリアムズ(Esther Williams)の人気にあやかって発展すると、1984年のロサンゼルス五輪でソロとデュエットが初採用された。その後、ソロは五輪種目から除外され、1996年のアトランタ五輪から団体が採用された。

 男子のシンクロ競技自体が存在しないわけではい。世界水泳では、2015年のカザニ大会(16th FINA World Championships)で初めて混合デュエットが実施された。しかし、五輪ではいまだ採用に至っていない。

 リオ五輪のメダリストの多くは、男子の参戦を歓迎し、水泳と体操、そして水中ダンスの三つの力が問われるシンクロナイズドスイミングの世界が、よりいっそう開かれたものになればいいと考えている。

 団体で金メダリストを獲得したロシアのアラ・シシュキナ(Alla Shishkina)は、「男性の筋力は、リフトで間違いなくプラスに働きます。もちろん賛成派です」と話し、「混合デュエットが採用されれば、獲得できるメダルの数が増えます。混合団体も素晴らしい考えです。私たちなら、チームで最高のものを作れると思います」と語った。

 団体で銀メダルを獲得した中国の湯夢妮(Tang Mengni)も同じ意見で、「この競技が好きで、楽しめる人であれば、出場できるべきだと思います。アーティスティック・インプレッションの面でも、男性の方が力強さがあります」とコメントしている。

 団体とデュエットの双方で銅メダルを獲得した三井梨紗子(Risako Mitsui)も、「世界水泳の混合デュエットは、本当に新鮮で刺激的でした。女性では難しい技もありますし、男性の力が加われば、演技の質は上がると思います」と述べている。

■男子参入に対する慎重論も

 一方、三井とペアを組んだ乾友紀子(Yukiko Inui)は慎重派だ。25歳の乾は、「女性だけの美しさというものがあると思うんです」と話している。

 男性の参戦に賛成していた湯夢妮も、美観については気になっているようで、「全体の調和という点では、女性限定の方が少し上だと思います。男性と女性は違います。身長でも高低の差があるし、腕の長さや足の長さも違います」と語った。

 今大会のデュエットと団体を制し、五輪で通算5個の金メダルを獲得しているロシアのナターリア・イシェンコ(Natalia Ishchenko)は、混合デュエットの採用で、伝統の女子デュエットに悪影響が出ることを心配している。

「難しい質問ですね。もし混合デュエットが採用されれば、女子デュエットが除外される可能性があるからです」

「現在のデュエットでは、選手たちが非常に高いレベルで演技を行っています。しかし混合デュエットで高いレベルにあるのは、世界でも3か国くらいしかありません。将来的には(男子の)五輪参加もありかもしれませんが、今はまだ時期尚早という気がします」

(c)AFP/Emmeline MOORE