【8月23日 AFP】協力は、人間と動物を隔てる重要な特徴の一つとされることが多いが、人間に最も近い近縁種のチンパンジーは、チームワークを学習して実践できるとする研究結果が22日、発表された。

 米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された研究論文によると、チンパンジーは実際に5:1の確率で競争よりも協調することを選び、仲間のたかり行為を阻止する方法を見つけるのだという。

 研究実施時は米エモリー大学(Emory University)ヤーキス国立霊長類研究センター(Yerkes National Primate Research Center)の大学院生で、現在は米カニシャス大学(Canisius College)で動物行動学・生態学・保全学の助教を務めている論文の主執筆者、マリニ・サチャック(Malini Suchak)氏は「対立と協力の発生比率が人間とチンパンジーでかなり近いことを考えると、今回の研究は、霊長類種全体での顕著な類似性を示しており、人類の進化に関する新たな知見をもたらしている」と話す。

 チンパンジーが協力行動を取る可能性は低いとする結果が得られた過去の研究は、厳密に制御された実験室環境で実施されたものだ。これとは異なり、ヤーキス霊長類センターの研究チームは今回、チンパンジーの自然な生息環境の再現を試みた。

 屋外の緑地で実施した実験では、チンパンジー11匹の近くに餌を得るために引っ張ることができるロープ状の器具を設置。器具は、2匹または3匹が1組になって協力しなければ、餌が手に入らないような仕組みとなっており、また協力相手は各自が選べるようになっていた。

 すると当初は競争していたが、チンパンジーたちはすぐに互いに助け合う方が有利になることを理解した。研究チームは94時間に及ぶ実験で、協力的な行動の成功を3656回記録した。その一方で、競争的な交流は600回あまり発生した。この場合、チンパンジーたちは協力して餌を取ろうとはせず、横取りを実行または試みたり、他者を押しのけたり、けんかを始めたりした。