【7月10日 AFP】リオデジャネイロ五輪開幕を約1か月後に控える中、ドイツ公共放送連盟(ARD)と英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)による新たな調査で、陸上競技大国のケニアが再びドーピング問題にさらされている。

 9日に放映されたドキュメンタリー番組は、同国アイトン(Iten)にある一流選手が集う練習施設でドーピングがはびこっていると報じた。

 ARDとサンデー・タイムズの共同調査で国家ぐるみのドーピングが明るみとなり、ロシアの陸上選手はリオデジャネイロ五輪での出場禁止処分を受けている。

 この3年間で約40人のケニア選手がドーピング検査に落ちており、世界で屈指の中長距離ランナーを輩出するという評価は、ずたずたになっている。

 世界反ドーピング機関(WADA)からロシアと同様の処分を科せられる可能性を示されたことを受け、ケニアの国会は、ドーピングおよびドーピング製品の提供を犯罪行為とする法律を数週間前に制定したばかりだが、この疑惑は同国にとって大打撃となるかもしれない。

 番組は、海抜2400メートルに位置するケニアや欧州の長距離選手に人気のトレーニング施設に、撮影スタッフが選手のふりをして潜入し、大部分が隠しカメラで撮影された。

 番組では、持久力を向上させる造血剤のエリスロポエチン(EPO)の箱が施設内に置かれているところや、ゴミ箱に捨てられた使用済みの注射器の映像などが映された。

 EPOは施設近くの薬局で入手することができ、さらに、2人の医師が選手のふりをした撮影スタッフにドーピング製品を喜んで提供すると申し出た。

 この医師のうち一人は、英国人選手3人を含む「50人以上」の選手にドーピング製品を提供したと明かし、「3か月以内」に選手たちのパフォーマンスを劇的に改善させたと語った。

「ドーピング検査の対象になったとしても、何も見つからない。それがトップアスリートに必要なことだ」

 ARDによるとこの医師は、後の取材では前言を撤回してドーピングには関与していないとコメントした。

 その後、この医師ともう一人の医師は警察に逮捕されている。

 一方、ある五輪金メダリストのコーチという男性は顔を隠して出演して「どこからともなく出てきた選手の大部分は、ドーピングをしている」とコメントし、報じられた疑惑について認めた。

 ケニア反ドーピング機関(KADA)のジャフター・ルグト(Japhter Rugut)会長は、この事実は「非常にショッキング」だとコメントした。

「草の根レベルでは多くの問題があることは分かっている。スポーツ選手や医師ら犯罪行為に関与した者は、自らの行動について答える必要がある。そういった人物を根絶するため、われわれは当局とともに働いていく。リオ五輪にはクリーンなチームで臨みたい」

(c)AFP