【6月26日 AFP】英国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利し、英国が世界最大の単一市場から離脱する方向になったことを受けて、複数の専門家は24日、中国が通商面で英国から有利な条件を引き出す上ではまたとない好機になるとの見解を示した。

 欧州国際政治経済研究所(ECIPE)のギー・ドジョンキエール(Guy de Jonquieres)シニアフェローはAFPに対し、英国が今後EUなどの貿易相手国・地域から有利な通商条件を引き出せなかった場合、中国との交渉で「苦境に陥る」との予想を示した。

 英中両国は、二国間関係が新たな「黄金期」を迎えたと主張している。英国はかつての帝国主義国で、19世紀には中国にたびたび侵攻した。一方の中国はアジアの巨大な新興国であり、世界第2位の経済規模を誇る。

 中国税関当局の統計によると、昨年の英国との貿易額は785億4000万ドル(約8兆円)で対EU貿易総額の約14%を占め、貿易収支は400億ドル(約4兆円)余りの黒字。外国為替相場がポンド安になれば、中国の対英輸出額は押し上げられることになる。

 ECIPEのドジョンキエール氏は「実際には中国のペースに巻き込まれていないとは言え、これまで英政府は中国の主張を大幅に受け入れる用意をにじませる行動を取ってきた」と付け加えた。その上で「英国が自力で中国との通商交渉を行えば中国市場へのアクセスを改善できるとは考えにくい」と語った。

■独自の通商交渉官がいない英国

 中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官は24日、英国民投票の結果を尊重し、英国やEUとの関係で「長期戦略的観点」に立つと表明。その上で、「欧州の繁栄と安定は全ての人々の利益に資する」と付け加えた。

 しかし投票から数時間後、国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)のウェブサイトは、中国との新たな通商協定の締結を目指して交渉するならば、英国は10年間にわたって500人の交渉官が必要になると指摘した。しかしECIPEのドジョンキエール氏によると、英国は1970年代にEUに加盟してから独自の通商交渉を行っておらず、今では独自の通商交渉官もいないという。

 英中両国が経済関係を強化する中、先月にはエリザベス女王(Queen Elizabeth II)が習近平(Xi Jinping)中国国家主席の昨年の訪英に言及して一部の中国高官は「とても非礼」だったと発言している場面がカメラに捉えられた。中国は習主席の訪英に合わせて巨額投資契約を締結した。

 国民投票の数日前、中国のある投資会社の首席エコノミストは、中国国営紙の環球時報(Global Times)に対し、英国はEU離脱で中国との「連携強化」が加速するとの見解を寄稿した。このエコノミストは「かつて世界を支配した国の影響力は現在低下している」とした上で、英国が世界の状況を踏まえた上で「相互援助」を求めて中国に目を向けるようになると予想。「英国がEUから離脱した場合、中国にとって本当に不利だろうか」と問いかけた。(c)AFP/Benjamin CARLSON