【5月22日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は21日、ベトナムと日本歴訪に出発した。大統領は日本で、世界初の原子爆弾の被災地である広島を、現職の米国大統領として初めて訪問する予定。

 オバマ大統領は、米大統領専用機「エアフォースワン(Air Force One)」で 現地時間午後1時20分(日本時間22日午前2時20分)に米首都ワシントン(Washington D.C.)を出発。途中アラスカ(Alaska)州アンカレッジ(Anchorage)のエルメンドルフ空軍基地(Elmendrf Air Force Base)に給油のため立ち寄る。

 10回目のアジア訪問となる今回の歴訪は、20世紀に起こった2度の痛々しい戦争の歴史に幕を閉じる目的もあり、このことは、米国の将来にとって重要と同大統領はみているという。

 オバマ大統領はまず、ベトナムのハノイ(Hanoi)を訪問。ダイナミックで急速な発展を遂げつつあるが、多くの米国民にとって「虐殺と愚行の場」というイメージが残る同国との関係改善を狙う。ベトナムにおける主要論点は、1975年のベトナム戦争終戦以来、戦争の最後の名残りとして現在も続く米国による武器禁輸令の解除であるという。

 同大統領は、ベトナムの国家主席(大統領)や首相、国会議長のほか、事実上の最高指導者であるグエン・フー・チョン(Nguyen Phu Trong)共産党書記長と会談する。チョン書記長とオバマ大統領は昨年、米ホワイトハウスの大統領執務室(Oval Office)で会談した経験を持つ。

 オバマ大統領は、ベトナムの次に訪れる日本で主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に出席。その後、米国の現職大統領として初めて、1945年にハリー・トルーマン(Harry Truman)元大統領が世界で初めて原爆を投下した広島を訪問する。

 オバマ大統領の広島訪問は、トルーマン元大統領による原爆投下の決断が正しかったか否かについての議論を必然的に引き起こした。広島と長崎に投下された原爆により日本人14万人が死亡したが、さらに多くの米国人が死亡する可能性があった地上戦回避のためには正しい選択であったと信じる米国人は多い。

 被爆者らは大統領の謝罪を求めているが、米政府は今回の訪問が謝罪目的ではないと明言。ベン・ローズ(Ben Rhodes)大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は、同大統領が「歴史を認識し、直視してそれについて討論することが重要だと考えている」と述べた。(c)AFP