【5月10日 AFP】ビタミンAの重要な源となり、一部の果物や野菜を鮮やかなオレンジ色や赤色にする色素「カロテノイド(カロチノイド)」を生成する遺伝子を、ニンジンで特定したとの研究結果が9日、発表された。

「DCAR_032551」と命名された遺伝子の存在は、ニンジンのゲノム(全遺伝情報)の完全解読によって明らかになった。結果をまとめた研究論文が、米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)に発表された。

 論文は、ビタミンA欠乏症が地球規模の健康問題となっていることを指摘しながら、カロテノイドを豊富に含むニンジンについて、「プロビタミンA(ビタミンAの前駆物質)の重要な供給源」と説明した。

 ニンジン(キャロット)で最初に発見された(ためにその名が付けられた)カロテノイドは、ニンジンが持つ遺伝子のどれが、その形成に最も大きく関与しているかについてはこれまで、謎のままだった。ニンジンは、今回の新たな分析により、合計で3万2115個の遺伝子を持つことが分かった。

 これによりニンジンは、ジャガイモ、キュウリ、トマト、コショウなどを含む、ゲノムが完全解読された十数種ほどの野菜のグループの仲間入りを果たした。

「地味な野菜」であるニンジンに隠された遺伝子の秘密を解明することにより、他種の野菜の病気への抵抗力や栄養価を高めることが容易になると、研究チームは指摘している。

 カロテノイドの蓄積を制御する仕組みが特定されたことで、今後は主食となる他種の根菜類に、遺伝子編集などの技術を用いてその仕組みを組み込むことが可能になるかもしれない。対象となる根菜類としては、南米原産で、アフリカで広く栽培されているキャッサバなどが考えられる。

 研究論文の主執筆者で、米ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)のフィリップ・サイモン(Philipp Simon)教授は「これらの結果は、ニンジンと他の作物で生物学的な発見と農作物の改良を促進させるだろう」と話す。

 ニンジンには、体内でビタミンAに変換される天然化学物質のベータカロチンが豊富に含まれている。オレンジ色が濃いほど、ベータカロチンの含有量が多くなる。ビタミンAは、正常な発育と発達、さらには免疫系や視力の正常な働きなどに不可欠とされている。

 カロテノイドについては、細胞を傷つける恐れのある「フリーラジカル」と呼ばれる単体の酸素原子を中和する抗酸化物質として作用し、心臓病や一部のがんを防ぐ働きがあると考えられている。サイモン教授は、AFPの取材に「カロテノイド化合物の中には、病気を予防する能力を持つものがある」と語った。

 興味深いことに、ニンジンが持つ遺伝子の数は、他の多くの植物と同様に、ヒトのそれより約20%ほど多い。(c)AFP/Marlowe HOOD