【2月18日 AFP】人など「高度な」生物にみられる閉経は、おそらく進化的要因ではなく偶然によって生じた現象だとする研究が17日、発表された。

 今回の論文の主著者で、英リバプール・ジョン・ムーアズ大学(Liverpool John Moores University)の生物学者、ヘーゼル・ニコルズ(Hazel Nichols)氏によれば、哺乳類の多くの雌は高齢まで繁殖活動を続ける。これに対し、人の女性が人生のおよそ3分の1を残して生殖能力を失うのはなぜなのか、生物学者たちは長年、頭を悩ませてきた。もっと粗野な言い方をすれば、人やシャチなど一部の生物種の雌はなぜ、子どもを産めなくなる年齢を大きく超えて生き続けるのかという問いだ。

 進化生物学者らは競ってこの「繁殖期後生存期間」を説明しようとしてきた。その一つである「おばあさん仮説」は、女性は孫の養育を助けることで、自らの遺伝子が存続する可能性を高めるために生殖期間よりも長生きするという説だ。

 しかし別の説では閉経は、世代間で遺伝子を受け継いでいくためのダーウィンのいう「生存闘争」に何らかのメリットをもたらしているわけではなく、単に偶然生じた老化プロセスの「ずれ」だと説明する。ニコルズ氏は「1台の車でも部品によって老朽化のペースが違うように、身体各部の老化速度も異なる」という。現代医学や栄養状態の向上も、進化のペースを超えて「自然の」寿命の限界を引き延ばすのに一役買っている。

 ニコルズ氏らのチームは、過去の人類を含む異なる哺乳類26種に関するデータを検証した。データは生存期間や集団規模の影響、閉経後に二つの性のどちらが多数を占める集団にいるかという傾向などについて検証された。その結果、2説ともそれだけでは閉経の謎を十分説明することはできなかったが、二つを合わせると明解なストーリーが現れた。

 ニコルズ氏はメール取材で「繁殖期後生存期間は、偶然生じたものだと思われる。しかし、そこへ進化的『作用』が働き、雌が子どもや孫を世話することが有利となる種で、繁殖期後生存期間が延びた」と述べた。

 論文は英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に掲載されている。(c)AFP/Marlowe HOOD