【2月4日 AFP】オーストラリア政府が乳幼児らを含む260人以上の難民認定申請者を太平洋の島国ナウルの収容施設に送ろうとしている事態を受け、オーストラリア聖公会は4日、教会を「聖域」として難民申請者らに開放すると表明した。これに先立ち国連(UN)は、豪政府の政策は国際人権法に抵触する恐れが高いとして、再考を強く求めている。

 豪政府は厳しい移民政策をとっており、同国にボートでたどり着いた難民申請者らは強制送還されるか、太平洋のナウルとパプアニューギニアにあるオーストラリアの難民収容施設に送られる。施設に送られた場合は、難民申請が認められても豪本土への定住はできない。

 豪連邦最高裁は3日、難民申請者をナウルで収容するのは合法との判断を下した。これを受け、主に治療などの理由で一時的に豪国内に滞在している乳児37人、子ども54人を含む260人以上の難民申請者は、近くナウルに送り返される見通しだ。移送される難民申請者らの中には、ナウルで性的暴行を受けた女性も複数いる。

 こうしたなか、オーストラリア聖公会ブリスベーン(Brisbane)教区のピーター・キャット(Peter Catt)主任司祭はオーストラリア放送協会(ABC)に対し、「いにしえの『聖域』の概念」を復活させ、ブリスベーン市内のセント・ジョンズ大聖堂(St John's Cathedral)など教会施設を難民申請者らに開放すると説明。この「聖域」には法的な根拠はないものの「当局が接近して人々を引きずり出すようなことがあれば、法的措置が取られるだろう」と述べた。

 一方、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のルパート・コルビル(Rupert Colville)報道官は、「われわれの見解では、これらの267人を移送する政策によりオーストラリア政府は、残酷かつ非人間的で品位を傷つける扱いを禁じた『拷問等禁止条約(Convention against Torture)』に違反するリスクを犯すことになる」と警告。子どもをナウルに送ることは「子どもの権利条約(Convention on the Rights of the Child)」にも違反すると述べている。(c)AFP