【12月9日 AFP】ホルモンバランスの乱れを抱えている母親から生まれた子どもは、自閉症を発症するリスクがはるかに高いとする最新の研究結果が8日、スウェーデン・カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)から発表された。

 英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン医学誌「モレキュラー・サイキアトリー(Molecular Psychiatry)」に掲載された成果は、多のう胞性卵巣症群(PCOS)と呼ばれるホルモンバランス異常と、子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)との関連を示すものだ。

 ASDとは、子どもにみられるさまざまな神経発達障害のことだ。

 カロリンスカ研究所の公衆衛生研究部門を率いる研究者、キリアキ・コシドー(Kyriaki Kosidou)氏は「母親がPCOSと診断されると、子どものASDリスクが59%増加することを発見した」と述べた。

 原因については完全には明らかになっていないが、過剰量のアンドロゲン(男性ホルモン)を生成するPCOSを抱える母親に由来する特定の性ホルモンに、生後間もない時期にさらされることが、子どもの自閉症発症の一因となる可能性があることを示唆する証拠がある。

 コシドー氏は、声明の中で「PCOSと肥満症の両方を抱える母親のグループでは、ASDリスクがさらに増加した」と指摘している。

 妊娠可能年齢の女性の5~15%が、PCOSに罹患(りかん)している。

 研究チームは、1984年~2007年の期間にスウェーデンで生まれた全ての子どもを対象とする、人口ベースの全国調査を実施、ASD患者約2万4000人を特定した。

 ASDは女児より男児に4倍多くみられるが、今回の研究では、女児と男児でリスクに差はみられなかった。

 今回の疫学的研究では、母親のPCOSと子どものASDとの関連性を説明するメカニズムに関する調査は十分に行われていない。

 研究チームによると、今回の成果を完全に説明するにはさらに研究を重ねる必要があるという。

 研究を主導したレニー・ガードナー(Renee Gardner)氏は「PCOSを抱える妊婦へのケアについて、臨床医師らに具体的な提言を行うのは時期尚早だ」と話している。(c)AFP