【11月12日 AFP】タンザニアで野生のチンパンジーの母親が、生まれつき重度の障害がある子どもの世話をしていた。京都大学(Kyoto University)の研究チームが今週発表した報告書の中で明らかにした。チームは、この研究が人間社会においてどのようにソーシャルケアが進化していったのかを理解する助けになると期待している。

 研究チームは、タンザニアのマハレ山塊国立公園(Mahale Mountains National Park)で2011年に、「重度の障害がある」チンパンジーの雌の赤ちゃんがある集団内で生まれたことを発見し、約2年間にわたりその集団の行動を観察、記録した。

 霊長類に関する国際学術誌「プリマーテス(Primates)」の電子版に9日に掲載された抜粋によると、赤ちゃんはダウン症候群に似た症状を示していたという。研究者らは、母親の献身的なケアや、母親代わりをした姉のおかげで、野生で23か月生き延びられたのかもしれないと分析。その後、子どもの姿が確認できなくなったことから、死んだとみている。

■母と姉が連携して世話

 京大野生動物研究センター(Wildlife Research Center)の中村美知夫(Michio Nakamura)准教授が11日にAFPに語ったところによると、赤ちゃんに授乳する時、母親と姉が腕で赤ちゃんを支えていたという。一般的に、チンパンジーの赤ちゃんは面倒を見てくれる相手に自力で抱きつくことができるが、この赤ちゃんの足には十分な力がなかったという。

 障害のある野生のチンパンジーを世話する様子が観察されたのは初めてで、人間社会で障害者に対するケアがどのように進化したのかを理解する新たなヒントになるという。

 また、母親は、障害のある赤ちゃんの世話を親族以外のチンパンジーがすることを許さなかったが、他の子どもたちの世話に関しては比較的寛容だった。集団の他のメンバーらは、障害のある子どもに対して嫌ったりおびえたりする行動を示さなかったとしている。(c)AFP