【10月1日 AFP】2011年以降にシリアで死亡した20万人以上の一般市民のうち4分の1以上が女性と子どもで占められており、非戦闘員の死亡率の高さが難民危機の一因となっている可能性が高いとの研究が、9月30日の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)に掲載された。

 研究は、シリア内戦の民間人犠牲者を男女や子どもなどのカテゴリーで分け、各種の兵器が及ぼした影響を分析した初めてのもの。研究チームは「民間人の男性が射殺される可能性が高いことと比べると、子どもと女性は爆発物と化学兵器により死亡する可能性が高かった」と述べている。

 シリア内戦の犠牲者のうち民間人と戦闘員を区分し、さらに死因を明記している資料は、「人権侵害証拠収集センター(Violations Documentation Centre)」の発表しているものしか存在しておらず、研究チームは、この資料の7万8769人の死者を分析した。死者の大半を占める7万7646人の死亡は、シリア政府が統治する地域以外で記録されていた。

■空爆・砲撃による子どもの犠牲

 研究によると、シリア政府の統治下にある地域と反体制派が掌握している地域とでは、民間人死者に占める子どもの割合と死因が異なっていた。

 シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領率いる体制派が統治する地域では、民間人犠牲者のうち23%が子どもだった。一方、イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」または反体制派が掌握する地域では同割合は16%だった。

 死因では、両地域にさらに大きな違いがあった。政府軍以外の武装集団が掌握する地域では、子どもの犠牲者のうち4分の3が、砲撃または空爆で死亡していた。これらの攻撃は主に政府軍によるものだった。一方、政府統治地域では、空爆で犠牲になった子どもは一人もおらず、砲撃が子どもの死因の3分の2を占めていた。

「シリア政府も反体制派も、敵の軍事拠点を空爆ないし砲撃したと主張することが多い」「しかしわれわれの調べた結果、シリアの子どもたちを死なせる可能性が最も高いのがこれら(空爆・砲撃)の兵器だ」と、研究論文は指摘している。

 同じような傾向は、イラクの10年間に及ぶ紛争でも確認された。だが1991~95年のクロアチア紛争では、空爆や砲撃による子どもの犠牲者は極めてまれだったという。シリアで子どもがどの程度まで故意に標的とされているのか、あるいは巻き添えとなったのかについては詳しくは分かっていない。

 研究チームは、「われわれの調査により、民間人が兵器の主な標的となっており、爆撃の犠牲者のうち民間人が不釣り合いなほどの割合を占めていることが分かった」と述べた。

「現在の欧州の移民・難民危機の根本的な原因が知りたいのであれば、これは間違いなく大きな要因となっている」(c)AFP