【9月16日 AFP】絶滅したと長年考えられていた深海魚シーラカンスの腹腔内に、進化の過程で使われなくなったとみられる肺が存在することが分かったとの研究結果が15日、発表された。

 研究チームは英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表した論文の中で、この肺は人間の盲腸と同じく、進化によって機能が退化した可能性が高いと指摘している。

「生きた化石」と称される現代のシーラカンスは、すべての魚と同様、えらを用いて水中で呼吸している。だが研究チームは、シーラカンスの祖先は数百万年前、肺を使って呼吸していた可能性が高いと結論付けた。

 論文共著者のブラジル・リオデジャネイロ州立大学(Rio de Janeiro State University)のパウロ・ブリト(Paulo Brito)氏は、AFPの取材に「中生代までに、酸素圧の変動が非常に低い環境である深海域に一部のシーラカンスが適応したことが誘因となり、肺呼吸が完全に行われなくなった可能性がある」と語った。

 この発見により、非鳥類型恐竜を含む生物の大半が地球上から消え去った6600万年前の大量絶滅を、当時浅瀬に生息していた可能性が高いシーラカンスがどのようにして生き抜いたかが説明がつくかもしれないと、ブリト氏は指摘。またこれは、肺が現在のしなびた形に「顕著に縮小」したことの説明にもなると、同氏は電子メールで述べた。

 ブリト氏によると、今回の新発見は、シーラカンスの幼魚と成魚の標本の解剖とスキャン、三次元復元などを行った結果に基づくものだという。

 また、機能が退化した肺の相対的な大きさが、成魚より胚の方がはるかに大きいことも分かった。これは、加齢に従って肺の成長速度が遅くなることを意味しているという。