【9月7日 AFP】国連人道問題調整事務所(UN Office for the Coordination of Humanitarian AffairsOCHA)は7日に発表した報告書の中で、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)でパレスチナ人の建物や家屋など約1万3000棟がイスラエル当局の取り壊し命令対象となっており、住民と建物が「永続的に不安定な状況に置かれ、脅威にさらされている」と警告した。

 イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸の広い範囲でこれまでに取り壊し命令が出された建物や家屋は推定で約1万3000棟にのぼり、このうち1万1000棟が取り壊し待ちの状況にあるという。

「Under Threat(脅威にさらされて)」と題された今回の報告書は、実際に取り壊しが実行される例は少ないものの、一度出された命令には有効期限がないため命令対象となった家屋に住む人々は永続的に不安定な状況に置かれ、脅威にさらされていると指摘する。 「取り壊しが実施されれば、その建物に住んでいた人は家を失ってそれまでの生活を続けられなくなり、貧困に陥り援助への依存を深めていく」(報告書より)

 報告書は、ヨルダン川西岸でイスラエルの完全支配下にあるC地区に関するイスラエル当局のデータを引用している。C地区の面積はヨルダン川西岸の6割を占める。

 先月には非政府組織「オックスファム(Oxfam)」など31団体が、ヨルダン川西岸で8月のある1週間だけで家屋など63棟が取り壊されパレスチナ人132人が住む家を失ったとする国連の統計を引用し、イスラエルの破壊行為を批判していた。

 AFPは今回の報告書についてイスラエル当局にコメントを求めたが、返答は得られていない。ただしイスラエル当局は先に、そのような取り壊しを行ったのは対象となった建物が建築許可を取らずに建てられていたからだと説明していた。しかしパレスチナの人たちは、建築許可を申請しても拒絶されるのが通例で、無許可で建築せざるを得なかったと話しており、今回の報告書でも同様の説明がされている。(c)AFP