【8月28日 AFP】米南部バージニア(Virginia)州で、ローカルテレビ局の生中継中だった女性リポーターと男性カメラマンが銃撃を受け死亡した事件で、犯人が自らの視点から凶行の様子を撮影した動画からの画像を複数の新聞が掲載したことから、報道倫理をめぐる議論が巻き起こっている。

 リポーターのアリソン・パーカー(Alison Parker)さん(24)とカメラマンのアダム・ウォード(Adam Ward)さん(27)が殺害された26日の事件後の報道で、これらの衝撃的な画像が大々的に使用されたことに、一部の読者やメディア倫理専門家は反発。責任あるジャーナリズムの一線を逸脱した行為だとの非難の声を上げている。

「どこで線引きするのかは、私にとっては明白。情報が利己的に利用された瞬間だ」。米紙USAトゥデー(USA Today)の元編集長で、現在はミドルテネシー州立大学(Middle Tennessee State University)でコミュニケーション学部長を務めるケン・ポールソン(Ken Paulson)氏は語る。「もし有名人がレイプされる映像を撮影したとしたら、それを放送するか?しないだろう。2人の人間が殺害される場面が、有名人のレイプよりも公序良俗に反しないという理由はあるか」

 たとえ同じ暴力的な画像がインターネット上で閲覧可能だったとしても、新聞には「読者の価値観を尊重し、衝撃や動揺を与えないという責務がある」と、ポールソン氏は指摘する。「もしあなたの規範が、『これは皆にツイートされるか?』だったとすれば、あなたには規範など全くないということになる」

 ツイッター(Twitter)上では、犯行後に自殺したベスター・リー・フラナガン(Vester Lee Flanagan)容疑者(41)が撮影した映像からの画像が新聞に掲載されたことに衝撃を受けたとのコメントが、読者らから寄せられている。画像には、銃の引き金を引くフラナガン容疑者を写したものも含まれていた。

 米ビジネス専門誌「ビジネス・インサイダー(Business Insider)」のジャーナリスト、ハンター・ウォーカー(Hunter Walker)氏はツイッターで「ニューヨーク・デーリー・ニューズ(New York Daily News)がついさっき、明日の第1面に掲載予定のおぞましい画像をシェアした。この件に関わった人たちが今夜ぐっすり眠れるとは想像できない」とコメントした。

 また、同様の画像を第1面に掲載した英大衆紙サン(The Sun)に対し、ツイッターでは「くず」「ジャーナリズムの面汚し」といった批判が相次いだ。