【8月5日 AFP】政治的にリベラルか保守かという傾向と遺伝子、より正確には、一つの遺伝子の特定の変異体とを関係づける研究が5日、発表された。この変異体は、男性よりも女性に及ぼす影響の方が大きいようだという。

 シンガポール国立大学(National University of SingaporeNUS)のリチャード・エプシュタイン(Richard Ebstein)氏が率いる研究は、シンガポールに住む漢民族出身の大学生1771人を対象に、質問表への回答とDRD4遺伝子の変異体の有無を比較した。DRD4遺伝子は、神経伝達物質ドーパミンの脳内での放出のされ方を決定する遺伝子の一つだ。

 研究で明らかになったのは、不平等を非難する傾向の強いリベラル派になるか、変化に慎重な筋金入りの保守派になるかという違いと、この変異体の有無とに強固な関連性があることだ。

 さらに一般的には女性の方が男性よりも保守的な傾向が強いが「政治的姿勢とDRD4の関連性は、女性の場合、非常に顕著」で、男性では女性ほどではないことが示された。

 これらの研究結果は、同じ遺伝子に関連し同様のパターンがみられた欧州系人を対象とした先行研究によっても強化される。

「氏(遺伝子)か育ち(環境)か」という長年の論争では久しく社会的価値観、特に政治的価値観は、育った家庭環境、教育、社会階級に基づくとみなされていた。しかし、研究者の言葉を借りれば「生物学を無視することはできない」報告が相次いでいる。脳は特徴ある複数のドーパミン経路とつながっているが、その一つはリスクを冒すことに関係しており、これはほぼ間違いなくリベラルか保守かの二分法に相対している。

 今回の研究では、保守傾向かリベラル傾向かを評価するために標準化した質問表を使用し、遺伝子と政治的姿勢の関連性を解くことを試みた先行研究との比較を容易にした。エプシュタイン氏らは「われわれの研究結果によって、政治的姿勢の個人差、特に女性におけるそれに、DRD4遺伝子変異体が寄与する役割に関する証拠が得られた」と結論している。(c)AFP/Marlowe HOOD