【7月10日 AFP】前途有望な米連邦捜査局(FBI)のエリート麻薬取締捜査官が、証拠品として押収した麻薬に手を出し、薬物中毒に――米ワシントンD.C.(Washington D.C.)の連邦地方裁判所は9日、この元捜査官に対し、証拠品の横領などで禁錮3年の判決を下した。

 マシュー・ローリー(Matthew Lowry)被告(33)は、捜査で証拠品として押収されたヘロインを横領し、その結果、麻薬密売の容疑で逮捕された約30人が証拠不十分で起訴できなくなったとされる。横領発覚後、被告は捜査官の職を解かれた。

 ローリー被告の凋落(ちょうらく)は、潰瘍性結腸炎がきっかけで始まったという。被告の弁護士は、慢性的な痛みを抑えるため鎮痛剤に依存していたのが、FBIの任務を遂行する中でヘロイン中毒へと移行したとAFPに説明。「被告は、大規模な麻薬密売組織の捜査を続ける中で体調を整えようとして、ヘロインを使った」「高揚感を得るためではなく、仕事を頑張るためだった」などと述べた。

 警察官だった父親に憧れてFBI捜査官を目指したローリー被告は、FBIアカデミー(訓練学校)を優秀な成績で卒業し、わずか3年でエリートコースである麻薬取締捜査官に抜擢された。上司からも信頼を得ていたが、捜査で押収したヘロインを数か月にわたって少量ずつ盗んでいた。

 1歳半の子の父親でもあるローリー被告のヘロイン横領が発覚したのは昨年9月。ワシントンの麻薬密売で悪名高い地区で、麻薬を使用して酩酊しているところを発見されたのだ。法廷に提出された証拠資料によると、まともに話せない状態だったという。燃料切れで放置されていた被告の車の中からは、被告が関わった捜査で押収されたヘロインの痕跡が、空の証拠物件袋とともに見つかった。

 今年3月、ローリー被告は司法妨害、記録の改ざん、ヘロイン所持など64件の罪で起訴され、起訴事実を認めた。9日の判決公判では、涙ながらにFBIの元同僚や米政府に謝罪し、自身の行為に「全面的な責任がある」と述べた一方、判事に「寛大な判断」を求めた。被告には最高で禁錮7年が言い渡される可能性があった。(c)AFP/Chantal VALERY