【6月19日 AFP】3400年前のエジプトの希少な埋葬布が18日、仏パリ(Paris)で競売に掛けられ、37万4000ユーロ(約5230万円)で落札された。大富豪の銀行グループ後継者からその妻、愛人をめぐった旅の末、埋葬布に新たな所有者が決まった。

 競売会社ピアザ(Piasa)が手掛けた今回の競売はまさに異例だった。同様の埋葬布は世界で他に22枚しか確認されておらず、その大半がパリのルーブル美術館(Louvre Museum)や米ニューヨーク(New York)のメトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)などの美術館の所蔵となっているからだ。

 死者の石棺にかけられていたはずのこの埋葬布について、主催者らは競売開始に先立ち、落札価格がどの程度の金額に達するかは分からないと述べていた。競売は5万ユーロ(約700万円)から開始され、ものの数分で落札が決まったという。落札したのは電話での入札者で、身元は公表されなかった。

 鮮やかな彩色が施された、縦29センチ、横21センチの四角形のこの小さな布地は当初、米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)グループの後継者、アーサー・サックス(Arthur Sachs)氏が所有していたもので、後に同氏の愛人だったフランス人小説家のジャンヌ・ロビトン(Jeanne Loviton)氏の手に渡った。ピアザが6か月前、1996年に死去したロビトン氏の愛人が所有していたパリ市内の住宅の遺品整理中にこの埋葬布を偶然発見した。売却時の所有者は同氏の娘だった。

 当初の所有者だったサックス氏は1927年、もともとは妻への贈り物としてこの埋葬布を購入した。妻はそれをパリの邸宅のバスルームに置いていたが、結局は夫のサックス氏に返した。そこで同氏は、埋葬布を当時の愛人だったロビトン氏にプレゼントした。ロビトン氏はその後亡くなるまで、埋葬布を自宅に保管していた。ピアザが発見した時、埋葬布は壁に掛けられたままの状態だった。