【5月20日 AFP】(写真追加)英国の歴史学者が19日、英劇作家ウィリアム・シェークスピア(William Shakespeare)の生前に制作された唯一の肖像画を発見したと発表した。だがこの主張に対して、懐疑的な見方も一部から浮上している。

 植物学者で歴史学者のマーク・グリフィス(Mark Griffiths)氏は、若くハンサムな人物が描かれたこの肖像画を、16世紀に著された植物に関する1484ページの書籍「本草書(The Herball)」の中で発見した。

 英誌「カントリーライフ(Country Life)」のマーク・ヘッジス(Mark Hedges)編集長は「シェークスピアの生前に完成した、彼だと特定可能な肖像画が見つかったのはこれが初めてだ」と語る。同誌は今回の発見の概要を説明した記事を20日に掲載する予定だ。

「他に2枚しかない本物のシェークスピアの肖像画は、どちらも死後に制作されたものだ。そのため、これは英語圏で最も著名な作家がどのような姿をしていたかを明らかにする重大な世界的大発見だ」

■33歳のシェークスピアか、懐疑的な見方も

 グリフィス氏によると33歳のシェークスピアが描写されているというこの印刷物には、これまで想像上の人物と考えられていた4人の肖像画が描かれている。この4人は実在した人物で、周囲に配置された花や草は、彼らの正体を明らかにする暗号になっていると同氏は主張する。16世紀のイングランド女王、エリザベス1世(Queen Elizabeth I)の時代は、この種の判じ物が人気だったという。

 シェークスピアとされる人物は、詩人の服装をしていることと、ユリ科フリティラリアと甘味種トウモロコシを手に持っていることから、その正体を特定できる。これらの植物は、シェークスピアの長編詩「ビーナスとアドーニス(Venus and Adonis)」と戯曲「タイタス・アンドロニカス(Titus Andronicus)」を示唆しているとグリフィス氏は主張する。頭の月桂冠は、シェークスピアが感銘を受けた古典詩人たちを暗示しており、肖像画の下にあるラテン語の暗号文字は、解読すると「ウィリアム・シェークスピア」と読める、とグリフィス氏は説明する。

 他の3人については、この本の著者のジョン・ジェラード(John Gerard)、フランドルの著名な植物学者レンベルト・ドドエンス(Rembert Dodoens)、エリザベス1世の大蔵卿だった初代バーリー男爵(Lord Burghley)とグリフィス氏は特定した。

 だが一部の専門家らは、グリフィス氏の主張に対して懐疑的な見方を崩していない。

 英バーミンガム大学(University of Birmingham)シェークスピア研究所(Shakespeare Institute)の所長を務めるマイケル・ドブソン(Michael Dobson)教授は「まったく納得がいかない。論拠の詳細はまだ見ていないが、この種の主張を繰り広げる出版物はカントリーライフが最初ではないことは確かだ」と話している。「シェークスピアが植物学の教科書に登場する理由を思い浮かべるのは不可能だ」(c)AFP