【5月15日 AFP】マレーシア当局は13日、難民数百人が乗った船2隻の受け入れを拒否した。匿名の当局者が明らかにした。翌14日タイ沖で1隻の難民船が発見され、前日にマレーシア領海から追い返された船である可能性が浮上している。東南アジア諸国政府に対しては、絶望的な窮地に立たされた難民の命で「人間ピンポン」ゲームに興じていると、非難が集中している。

 14日、ミャンマーで迫害を受けているイスラム系少数民族ロヒンギャ人が多数乗った船がタイ沖で漂流しているのが見つかった。

 日没頃には、見るからに痩せ細った男性らが海中に飛び込み、タイ海軍のヘリコプターが投下した食料品の袋を泳いで取りに行っていた。あるAFP記者は、拾った生のインスタント麺を、船に泳ぎ帰る前に海中でむさぼる男性の姿も目撃したという。

 難民の一人は報道陣の船に対しロヒンギャ語で、「航海中に10人ほど死んだ。遺体は海に捨てた」と叫んだ。「海をさまよって2か月になる。マレーシアに行きたいが、まだ到着できていない」

 アンダマン海(Andaman Sea)に浮かぶタイ南部のリペ(Lipe)島付近で見つかったその木造船上にいた衰弱した様子の難民たちの中には、幼い子どもの姿も多数見受けられたという。

 ある当局者が匿名を条件に語ったところによると、マレーシアの巡視船が13日遅く、同国北部のペナン(Penang)島とランカウイ(Langkawi)島沖で難民船2隻の航行を阻止。両船には合わせて600人が乗っていたという。

 この当局者は、「昨夜、ペナン島沖でマレーシア領海に入った1隻が追い返され、ランカウイ沖で別の1隻が領海内への侵入を阻止された」と明かした。このランカウイ沖で阻止された船が、翌14日にタイ沖で見つかった船と同一のものである可能性が指摘されている。

 マレーシアとインドネシアは、東南アジアに流入するミャンマーとバングラデシュからの難民を乗せた船舶の受け入れ拒否を公言している。また人権団体の指摘によると、この問題について協議するため今月29日に地域会合の開催を呼び掛けたタイも、難民船の停泊を許可しない方針を示しているという。

 国連(UN)の潘基文(バン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長や複数の人権団体は、関係各国が強硬姿勢を貫けば各国が果たすべき国際的な義務が守られず、数千人の命が危険にさらされる恐れがあると警告している。(c)AFP/Thanaporn PROMYAMYAI/Preeti JHA