【5月9日 AFP】米国からパキスタンへ無理やり嫁がせた娘が嫁ぎ先から逃げ出したことに激怒し、娘の駆け落ち相手の家族を殺害するよう命じた米ニューヨーク(New York)のタクシー運転手に7日、終身刑が言い渡された。

 ニューヨークのブルックリン(Brooklyn)区在住のモハマド・チョードリー(Mohammad Choudhry)被告(62)は、自宅から約1万3000キロ離れたパキスタンで2013年に起きた殺人事件をめぐる共謀と脅迫、不法入国などの罪を問われていた。

 米検察当局によれば、チョードリー被告の娘で米国籍のアミナ・アジマルさんは、チョードリー被告の命令でパキスタンへ送られ、3年以上にわたって、被告に命じられた相手との結婚生活を強いられた。アジマルさんは父親のチョードリー被告に決められた相手から離れ、恋人のシュジャート・アッバス(Shujat Abbas)さんと一緒に、米国務省の支援を得て米国へ逃げ帰った。

 すると激怒したチョードリー被告とパキスタン側の親族は、パンジャブ(Punjab)州グジラート(Gujrat)に住んでいたアッバスさんの家族を、繰り返し脅迫するようになった。

 さらに13年1月26日には、チョードリー被告の兄弟ら親族が、アッバスさんの両親の車に向かって複数回発砲する事件が起きた。また、このときチョードリー被告はアッバスさんの父親に電話をかけ「娘を返さなければ、おまえたちの家族5人を皆殺しにするか、おまえの息子を探し出して殺す。今回は車を撃ったが、これは警告だ。次はおまえたち5人全員の胸に撃ち込んでやる」と脅迫した。

 また、チョードリー被告は自らの娘であるアジマルさんも同様に脅迫。その数日後、アッバスさんの父親と姉妹の1人は射殺された。目撃者によれば、2人の遺体のかたわらにはチョードリー被告の兄弟ら親族が銃を持って立ち、遺体を冒とくしていた。

 その後、アッバスさんの残りの家族は、逃げるために米国へ移住した。

 パキスタンでは毎年何百人もの女性たちが、パートナーによる暴力(ドメスティック・バイオレンス、DV)や、家族の名誉を守るためとする「名誉殺人」によって身内に殺害されているが、裁きを受ける例は少ない。(c)AFP