【5月6日 AFP】海面の上昇により、今世紀中に大部分が水没する恐れがあるとされている米フロリダ(Florida)州のマイアミビーチ(Miami Beach)市。こうした懸念をよそにマンション建設ブームに沸く同市では、高層ビルの建設が急ピッチで進められている。

 市関係者は、不動産ブームを背景とした固定資産税の税収増加により、気候変動対策への大型投資に必要な資金が調達できると期待する。一方、多くの科学者は、海面上昇への対策がどの程度、また、どのくらい早期に実施できるのか、疑問視している。

 マイアミビーチでは、雨の降らない日でも海水で道路が冠水することが次第に多くなっている。海抜の平均がわずか30メートルのフロリダ州では、人口2000万人の大部分が沿岸地域に住んでおり、なかでもマイアミビーチは暴風や高潮の影響をもろに受ける環境にある。

 フロリダは米国で3番目に人口が多い州だ。ベビーブーマー世代が定年に差し掛かっていることから、今後、さらに人口が増えると予想されている。

 マイアミビーチが独自に導入を進める排水ポンプシステムは、コストが3億~5億ドル(約360億~600億円)に上る見通しだ。導入で、これまでのところかなり希望の持てる成果が出ている。マイアミビーチ公共事業(Miami Beach Public Works)の責任者、エリック・カーペンター(Eric Carpenter)氏はAFPに、「インフラ整備に投資すべき時だ。新たな開発事業で税収が増えている」と話した。

 公式のデータによれば、マイアミビーチの2014年の固定資産税の税収額は1億2800万ドル(約154億円)と、前の年から8.8%増加した。

 米政府などが最近発表した報告によると、海抜が低く人口が密集しているマイアミビーチは国内の都市の中で、気候変動による影響を受けるリスクが最も高い。2100年までに、海面は1.8メートルほど上昇する恐れがあり、もし現実にそうなれば、マイアミビーチの3分の2は水没することになる。

 フロリダ国際大学(Florida International University)のピーター・ハーレム(Peter Harlem)氏(地質学)は、現行の戦略では市制100周年を迎えたマイアミビーチを救うことはできないと警鐘を鳴らす。ハーレム氏は、長期的な海面上昇への対策は非常に高いコストを要することや、一部の地区を救うのに資金を使い果たしてしまった場合、どうするのか、などの懸念を示した。