【4月30日 AFP】ハト程の大きさで、コウモリに似た翼を持つ新種の恐竜の化石を発見したとの研究報告を、中国の科学者チームが29日に発表した。鳥類の初期進化に予想外の展開をもたらす発見とチームは主張しているが、この結論に異議を唱える声もすでに上がっている。

 中国語で「奇妙な翼」を意味する「イーチー(Yi qi)」と命名されたこの恐竜は、羽根ではなく皮膜のある翼を特徴としているが、進化の中で飛行の「実験」を試み失敗した数多くの例に、奇妙な予想外の一例として名を連ねるものだと研究チームは述べている。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文の共同執筆者で、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の徐星(Xu Xing)氏は「どれほどの『実験』が行われていたかを示す明確な一例だ」と語り、「(恐竜から進化した)鳥類の起源に近い。多くの系統がさまざまな方法で空に飛び立とうとしたが、最終的にはただ1つの種でしか成功しなかった」と続けた。

 イーチーは鳥類の直接の祖先ではなく、絶滅した系統の近縁種とされた。

 恐竜に命名されたものとしてはこれまでで最も短い名前を持つイーチーは「スカンソリオプテリクス(Scansoriopterygids)」科と呼ばれる、羽根と非常に長い「指」を持つ小型恐竜の種族に分類された。長い指は、木登りや昆虫を捕らえるのに使われた可能性がある。

 中国で発見された化石でしかその存在を知られていないスカンソリオプテリクスは、始祖鳥(Archaeopteryx)などの原始的な鳥類と近縁関係にあり、飛行しない恐竜と鳥類との間の過渡的な種とみなされている。スカンソリオプテリクスについては空を飛ぶ生物ではないとこれまでは考えられてきた。

 新たにスカンソリオプテリクス科に追加されたイーチーは、成体の体重が約380グラムで、約4センチの頭骨には極小の歯が並んでいる。また羽根は貧弱すぎるため、飛行には役立たないとみられている。

 だが、イーチーを本当に際立たせている特徴は、両手首から突き出た全長約13センチの突起物だ。

 恐竜でこのような特徴が見つかるのは今回が初めてとなる。そして研究チームは、コウモリや飛行するムササビなど、現代の空飛ぶ哺乳類にみられるものに似ていることに着目した。「これは飛行にとって、最終的に極めて重要になる構造であることに気が付いた」と徐氏は話す。研究チームは予想通り、骨とともに保存されていた「膜性組織」の残留物も発見している。

 これまでのところ、イーチーの存在を知る手掛かりについては、北京(Beijing)近郊で農夫が発見した1億6000万年前のジュラ紀の岩石の中にあった1個の化石だけとなっている。しかも、胸郭から下の部分は失われていたため、骨盤、後肢、尾などは、他のスカンソリオプテリクスのものであることが知られている化石から推測しなければならなかった。