【4月14日 AFP】フランスの極右政党、国民戦線(National FrontFN)を創設したジャンマリ・ルペン(Jean-Marie Le Pen)前党首(86)は13日、地方選への出馬を断念し、後任には孫を推す意向を明らかにした。ジャンマリ氏は、実の娘で国民戦線の現党首のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏と衝突し、世間の耳目を集める「お家騒動」に発展していた。

 ジャンマリ氏のこの決意により、ルペン家内と国民戦線党内の両方での緊張が緩和するものとみられる。反欧州・反移民を掲げる国民戦線は、マリーヌ現党首が人種差別的・反ユダヤ的イメージの払拭(ふっしょく)に努めたことから、ここ数年の選挙戦で躍進していた。

 ジャンマリ氏は雑誌フィガロ(Le Figaro)に対し、「国民戦線にとって最善の候補はやはり自分だったと思う」と断った上で、12月に行われる地方選で検討していた仏南東部からの出馬を見送ると語った。

 代わりに誰が立候補するのかという問いにジャンマリ氏は、孫娘のマリオン・マレシャルルペン(Marion Marechal-Le Pen)氏(25)を後任に推すと回答。「もしマリオンが承諾すれば、とても良い候補者筆頭になると思う。彼女が一番だ」と語った。

 金髪でテレビ栄えする容姿のマリオン氏は最年少の仏国会議員。マリーヌ党首よりもさらに保守的とされ、最近党内で頭角を現している。マリオン氏の広報担当はAFPの取材に対し、同氏が地方選への立候補の意思を固めていると語った。

■「政治的自殺行為」

 ジャンマリ氏は今月に入り、ナチス・ドイツ(Nazi)が虐殺に用いたガス室を「過去のささいな事」とする持論を繰り返し、娘のマリーヌ党首の怒りを買った。さらに、第2次世界対戦(World War II)中の仏首相でナチスに協力したフィリップ・ペタン(Philippe Petain)氏を擁護する発言を行った。

 これで堪忍袋の緒が切れたもようのマリーヌ党首は、父親のジャンマリ氏が「政治生命を自ら絶つ行為に及んでいる」と強く非難し、12月の地方選におけるジャンマリ氏の立候補を支持しない考えを表明していた。

 地元メディアはこの「お家騒動」を連日報道し、ジャンマリ氏は13日になってとうとう自ら折れる決断をしたものとみられる。同氏は声明で、自身の発言のせいで国民戦線が陥った「深刻な危機」に加担するつもりはないと述べた。(c)AFP/Richard CARTER