【4月9日 AFP】せき、くしゃみ、鼻水などの症状に効く安価なアレルギー薬が、C型肝炎の治療に有効かもしれないとする論文を、米研究チームが8日の医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」に発表した。

 C型肝炎は、がんや肝硬変を引き起こす恐れのある肝臓の疾患。治癒が可能な最新の抗ウイルス薬は、4か月の投薬に8000ドル(約96万円)もの費用がかかる。一方、抗ヒスタミン剤「クロルシクリジン塩酸塩(CCZ)」では、錠剤1個の薬価が50セント(約60円)程度に抑えられる。

 米国立衛生研究所(US National Institutes of HealthNIH)のシャンシャン・ホー(Shanshan He)氏率いる研究チームは、C型肝炎患者は世界で約1億8500万人に上り、特にアジアやアフリカでは風土病のようにまん延していると指摘しながら、既存薬の新たな活用が患者に希望をもたらす可能性があると述べている。

 研究では、米食品医薬品局(US Food and Drug AdministrationFDA)の承認が既に下りている薬剤のライブラリーを詳細に調べ、C型肝炎の治療に役立つ可能性のある認可薬の候補を探した。そして、約50年前にFDAに認可されたクロルシクリジン塩酸塩に、C型肝炎ウイルス(HCV)が人間の肝細胞に侵入するのを阻害する働きがあることを突き止め、これによって感染を防ぐことができると分かった。

 ヒト肝細胞を移植したマウスを用いた実験では、クロルシクリジン塩酸塩はHCVを阻害しただけでなく、C型肝炎治療で問題になりやすい薬剤耐性を引き起こすこともなかった。さらに、他のC型肝炎治療薬と同時に投与すると、より効き目が高くなることも確認された。

 クロルシクリジン塩酸塩について研究チームは、「アレルギー治療薬としての安全性が臨床試験で確認されており、薬価も手頃。化学構造もシンプルで最適化しやすい。HCV感染治療に効果的で利用しやすい薬剤として、既存薬の再利用と再開発を進める有望な候補だ」としながら、今後はC型肝炎患者での臨床試験が必要になると説明している。(c)AFP