【3月6日 AFP】国連(UN)は5日、イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」に掌握されたイラクの都市ティクリート(Tikrit)の奪還を目指し同国軍が展開している大規模な軍事作戦により、周辺地域の住民約2万8000人が避難したと発表した。

 同作戦については、昨年ISが主にイスラム教シーア派(Shiite)からなる新兵ら数百人を虐殺したことに対する報復のためという見方もあり、作戦にはシーア派の民兵らも加わっていることから、宗派間対立に起因したアラブ系スンニ派(Sunni)殺害行為の横行につながりかねないという懸念も広がっている。

 国連が出した声明によると、「ティクリートとその周辺での軍事作戦により、およそ2万8000人がサマラ(Samarra)への避難を余儀なくされている」上、「現地からの報告によると、避難する人はさらに増えており、検問所でますます多くの家族らが足止めされている」という。国際移住機関(International Organisation for MigrationIOM)は、イラクには家を追われている人がすでに250万人いるとしている。

 イラク軍がティクリート奪還のための軍事行動を開始したのは2日。治安部隊とそれを支援する戦闘員ら約3万人が参加し、ISからの領地奪還作戦としては、過去最大規模のものとなっている。

 2006年に処刑されたサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領の出身地である同市を、過去8か月にわたって防衛強化してきたIS戦闘員らから奪還するのは、政府軍にとって非常に困難な挑戦となる。

 過去にシーア派民兵が加わった戦闘では、宗派間対立に根差したアラブ系スンニ派を標的とする報復殺人が起きたことから、同じ事態がティクリートでも起こりかねないと危惧されている。(c)AFP/Jean Marc Mojon