【2月19日 AFP】中国では春節(旧正月、Lunar New Year)に、繁栄を象徴する赤色の封筒にお金を入れて子どもたちに配る「紅包(ホンバオ)」という日本のお年玉にあたる慣習がある。

 この古くからの伝統が今やハイテク化し、スマートフォンから「電子版紅包」を送ることもできるようになった。巨大な紅包市場をめぐり、電子版紅包サービスを提供する電子商取引大手アリババ(阿里巴巴、Alibaba)とインターネット大手テンセント(Tencent、騰訊)が激しい競争を繰り広げている。

 北京(Beijing)に住むワンさん(28)は「銀行送金のように手数料を払わなくていいし、長時間待たされることもない。もっと便利で簡単だし、面白いよ」とAFPに語った。

 電子版紅包が登場したのは2014年。テンセントが運営し4億人のユーザーを持つ無料メッセージアプリ「微信(ウェイシン、英語名 WeChat)」が同様のサービスを初めて導入したところ、これが大当たり。10日間で約800万人が4000万件にのぼる電子版紅包を利用した。送れる金額は最低1元(約19円)から。送る相手が複数の場合、金額を分散できるオプションもある。

 アリババも負けてはいない。同社が運営する携帯用オンライン決済アプリ「アリペイ・ウォレット(支付宝銭包、Alipay Wallet)」のユーザー1億9000万人向けに、同社が株主となっている中国版ツイッター「新浪微博(Sina Weibo)」などを通じて電子版紅包サービスを始めた。

 春節前の数週間、両社の対決は過熱し、テンセントは「セキュリティー上の脅威」を理由に微信でのアリペイ電子版紅包サービスを取りやめた。

 さらに両社はオンラインゲーム作戦を展開。テンセントは数百円からまで約9万5000円まで総額8億元(約150億円)の紅包が当たるくじを10日間限定で微信で配信。アリババ側も合計113億円相当の紅包に商品券や割引券を合わせた、総額約200億円規模のキャンペーンを用意した。

「すごいよ。この年になって楽してお金がもらえるなんて思ってもいなかったよ」と話すワンさんは毎朝、紅包が届いていないか携帯を確認しているという。

 だがテンセントやアリババは、ただ気前の良い「サンタクロース」役を演じているわけではない。くじを導入して以来、新規ユーザーの数が大幅に増えており、これもれっきとした宣伝活動の一環なのだ。(c)AFP/Julien GIRAULT