【1月30日 AFP】インド北東部で子どもたちを苦しめ、時に死にも至らせている原因不明の脳疾患について、米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and PreventionCDC)は29日、果物のライチに含まれる有害物質に関係がある可能性を指摘した。

 この脳疾患では、患者の3分の1以上に脳卒中や精神状態の異変がみられ、中には死亡するケースもある。調査チームは、この病気の原因特定にはさらなる調査が必要としている。

 CDCが発表した「週間疾病率死亡率報告(Morbidity and Mortality Weekly Report)」によると、印ビハール(Bihar)州ムザッファルプル(Muzaffarpur)県とその周辺では、1995年からライチの栽培が行われており、約1か月間にわたるライチの収穫時期と患者の増加時期が一致しているという。

 2013年には子ども133人が、地元の医療機関で脳卒中や神経症状と診断された。患者の大半は1~5歳で、その半数近い44%が死亡。死亡した患者は、血糖値が下がる低血糖症と診断されるケースが他の患者に比べて2倍以上高かった。

 患者の髄液テストでは、日本脳炎や西ナイル熱など、この地域で過去に確認されている感染症のウイルスは陰性だった。また病気の子どもは健康な子どもに比べ、ライチの果樹園や農地で2倍以上の時間を過ごしていた。

 ムザッファルプルの2か所の委託病院では、2014年5月末から7月中旬にかけて、前年に使用された症例定義に当てはまる疾患と診断された小児患者が390人に上り、このうち31%が死亡した。

 研究チームは、動物実験で低血糖症の原因となることが知られているライチの種子で発見された成分、メチレンシクロプロピルグリシン(MCPG)化合物の詳細な調査を行っている。患者らの自宅近くで栽培されているライチの果実を使った実験の他、自宅や飲料水から採取した環境サンプルを使用した残留農薬の調査なども行われている。

 MCPGは、有毒成分ヒポグリシンA同様に重度の低血糖症などの症状の原因になると考えられている。CDCはヒポグリシンAについて、「西インド諸島と西アフリカでは、ライチと同じ科に属する果実、アキーを熟す前に食べた後に急性脳症を発症した例がある」と述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN