【1月22日 AFP】電子たばこの加熱温度を著しく上げると有害化学物質ホルムアルデヒドが発生し、これを深く吸い込むことで生じるがんリスクは、通常のたばこの場合の最大15倍に跳ね上がるとの研究報告書が、21日の米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された。

 米ポートランド州立大学(Portland State University)の研究チームは、電子たばこを高電圧と低電圧で使用した際に、それぞれ発生する蒸気を「吸入」する装置を使った実験を行い、液体が熱せられた際に発生する蒸気でのホルムアルデヒドの含有の有無およびその量を調べた。熱せられる液体には、合成香料やニコチン、プロピレン・グリコール、グリセロールが含まれている。

 装置による吸入は5分間に10回行われ、1回の吸入の持続時間は3~4秒だった。

 その結果、3.3ボルトで液体を熱した際に検出されなかったホルムアルデヒドが、5ボルトで熱した際には検出された。検出された値は、一般的な巻きたばこに見られるよりもはるかに高かったという。

 1日にたばこ1箱を吸う喫煙者は、1日につき推定3ミリグラムのホルムアルデヒドに曝露していると考えられている。

 報告書は、電子たばこを高電圧に設定した場合、喫煙者は1日につき3ミリリットルの割合で蒸気を吸うことになり、ホルムアルデヒドを含む物質で換算すると1日につき約14ミリグラムのホルムアルデヒドを吸入することになるとしている。また、こうした推定値については、「エアロゾル化した液体すべてを捉えておらず、また気相ホルムアルデヒドに至ってはまったく収集されていないため、控えめなものとなっている」と説明している。

 報告書はまた、たばこに含まれるホルムアルデヒドについての過去の2件の報告書を引用し、今回明らかになった値で曝露した場合、がんのリスクは長期喫煙者に比べて5~15倍に急上昇する可能性があると指摘し、「ホルムアルデヒドを含む物質が、気道に与える影響については不明だ。しかし、ホルムアルデヒドは、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)がグループ1に分類する発がん物質だ」と説明している。

 バーツ・ロンドンスクール医科歯科学校(Barts and The London School of Medicine and Dentistry)でたばこ依存症について研究するピーター・ハジェク(Peter Hajek)氏は、この研究結果に異論を唱える。「一般的な電子たばこの使用では、液体を過度に熱すると刺激の強い『ドライパフ』になるため、不快を感じむしろゆっくりと吸入することを避けるようになる」と述べ、研究結果は実際の使用状況を反映していないと指摘した。

「電子たばこの利用は、澄み切った山の空気を吸うほど安全ではないかもしれないが、喫煙よりかは安全だ。この研究結果によって、禁煙できない、あるいは禁煙したくないと思っているが、電子たばこの使用を検討している人たちに有害な喫煙を続ける口実を与えてしまうとしたら、それはとても残念だ」(ハジェク氏)

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