【1月21日 AFP】イエメンの首都サヌア(Sanaa)で20日、イスラム教シーア派(Shiite)系の民兵組織が大統領宮殿を制圧し、アブドラボ・マンスール・ハディ(Abdrabuh Mansur Hadi)大統領の公邸を襲撃した。当局者らは、ハディ政権の転覆を狙った攻撃だという認識を示している。

 ハディ大統領は先に、サヌア西部にある大統領公邸内で、顧問や治安当局者らと会議を行っていると伝えられていた。同国のナディア・サカフ(Nadia Sakkaf)情報相はツイッター(Twitter)で、「イエメン大統領が、政権転覆をもくろむ民兵らの攻撃を受けている」と発表した。

 目撃者らによると、公邸の外では兵士2人が殺害され、その後戦闘はひとまず終わったもようだという。また軍関係者がAFPに語ったところによると、民兵らは大統領府が入っている同市南部の大統領宮殿も制圧し、「備蓄されていた武器を強奪した」という。

 国連安全保障理事会(UN Security Council)は緊急会合を開き、攻撃を非難するとともに、ハディ大統領への支持を改めて表明。潘基文(バン・キムン、Ban Ki-moon)国連事務総長も「非常に懸念している」と述べ、直ちに戦闘を中止するよう呼び掛けた。

 この民兵組織はシーア派の一派のザイド派(Zaidi)に属する武装勢力で、現指導者アブドル・マリク・フーシ(Abdul Malik al-Huthi)氏の亡父の名から「フーシ(Huthis)」と呼ばれている。フーシ氏はテレビ演説で、ハディ大統領が国家の「分裂」を促していると非難。同大統領の処遇については「あらゆる選択肢」が起こり得る、国連安保理が講じようとするいかなる措置についても立ち向かう用意がある、などと述べて強気の態度を貫いている。

 同国首都では暴力行為がエスカレートする一方となっており、米国と同盟関係にあり、同国が展開する国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との闘いで鍵となるハディ政権が崩壊し、イエメン情勢が混沌とした状態に陥りかねないという懸念が広がっている。(c)AFP/Jamal al-Jabiri