【12月19日 AFP】鳥は嵐の接近を察知し、直撃の前に別の場所へ飛び去ることができる可能性があるとの研究論文が、18日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)などの研究チームが発表した今回の論文は、米国に生息する野鳥のキンバネアメリカムシクイに関する調査に基づくものだ。体重が9グラムほどしかないこの非常に小型できゃしゃな鳥は、竜巻や暴風を伴う巨大な嵐が接近していることを何らかの方法で1~2日前に察知したという。

 2014年4月末、米テネシー(Tennessee)州東部の山地にある繁殖地の鳥が逃げ出した直後に、巨大な嵐が米国の中部と南部を襲った。

 この嵐では、少なくとも竜巻が84件発生し、35人の犠牲者が出た。

 カリフォルニア大バークレー校の生態学者、ヘンリー・ストレービー(Henry Streby)氏は「繁殖期の鳥にみられるこの種の嵐回避行動が記録されたのは今回が初めてだ」と話す。

 また「定期的な渡りの間に発生した事象を回避するために鳥たちがルートを変更できることは確認されていたが、渡りを終え、繁殖のために縄張りを形成した後の段階で悪天候を避けることを目的にその土地を離れることは、今回の研究で初めて明らかになった」と指摘した。

 調査では、鳥たちが飛び去った時点では、嵐はまだ数百キロ先にあったため、気圧、気温、風速などに検知可能な変化はほとんどみられなかったという。

「今回の研究対象としたキンバネアメリカムシクイは、悪天候を回避するために合計で1500キロ以上を飛行し、嵐が過ぎ去った直後に巣に戻ってきた」

 研究チームは鳥が持つこの「第6感」について、人には聞こえない音を聞き取ることができる鳥の能力に関連していると考えている。これまでの研究で、鳥や他の動物の一部には、周波数20ヘルツ未満で発生する音波の可聴下音が聞こえることが判明している。

 遠方で風が吹いたり、海の波が砕けたり、火山が噴火したりなどの事象が起きると、可聴下音が発生する場合がある。鳥たちは、可聴下音の発生源が数千キロ離れている場合でも、それらを感知しているのかもしれない。

 竜巻もまた、強力な可聴下音を発生させることが知られている。

「気候変動に伴い竜巻の発生頻度と強度が増加していることを示す研究が増えている。今後、今回のキンバネアメリカムシクイが取ったような回避行動の必要性はさらに高まる可能性がある」とストレービー氏は話している。(c)AFP