【12月16日 AFP】オーストラリア・シドニー(Sydney)のカフェで起きた立てこもり事件で、死亡した人質の男女2人について、他の人質の命を救おうとして犠牲となった英雄だったとたたえる声が上がっている。

 15日にマーティン・プレース(Martin Place)のリンツ・ショコラ・カフェ(Lindt Chocolat Cafe)で銃を持った男が人質をとって店内に立てこもった事件は、16日未明に警察が店内に突入し、男を射殺して終結した。

 事件では、人質となっていた店長のトーリ・ジョンソン(Tori Johnson)さん(34)と、カフェを訪れていた法廷弁護士で3児の母親だったカトリーナ・ドーソン(Katrina Dawson)さん(38)が死亡。このほか6人が負傷した

 現場となったカフェから500メートルほど離れた聖マリア大聖堂(St. Mary's Cathedral)で16日に行われた追悼ミサで、アンソニー・フィッシャー(Anthony Fisher)司教は「罪なき2人の死に、わたしたちの街の心は張り裂ける思いだ」と追悼の意を表明した上で、メディアで伝えられている2人の自己犠牲的な行為を紹介した。

 ジョンソンさんについては、「機を見て犯人から銃を奪おうとしたが、悲劇的なことに銃が発射されて彼は命を落としたという。だが、それが警察突入の引き金となり、結果的に多くの人質の解放につながった」と説明。「また、ドーソンさんも妊娠していた友人を銃撃から守ろうとしたと伝えられている。2人とも他の人たちを救おうと自らの命を投げ出した」とたたえた。

 ニューサウスウェールズ(New South Wales)州警察のキャサリン・バーン(Catherine Burn)副本部長は、ジョンソンさんと立てこもり犯の間でもみ合いがあったとの報道の真偽についてコメントはせず、事件が終結に至るまでの経緯は現在も調査中だと語っている。

 射殺された犯人について、各メディアはイラン出身のマン・ハロン・モニス(Man Haron Monis)容疑者と伝えている。(c)AFP