【12月15日 AFP】英陸軍が基地を構える同国南部のアルダーショット(Aldershot)のサッカークラブ「アルダーショット・タウンFC(Aldershot Town FC)」は、本拠地が近いイングランド・プレミアリーグ所属のビッグクラブ「チェルシー(Chelsea)」のまばゆさとはほど遠い存在だ──。しかし、その老朽化したスタジアムを「ホーム」と呼ぶサポーターたちの忠誠心は、札束やトロフィーでは揺り動かすことはできない。

 収容人数7100人、築85年のスタジアム「レクリエーション・グラウンド(Recreation Ground)」を本拠地とするアルダーショット・タウンFCは、「ザ・ショッツ(The Shots)」の愛称で知られている。ゴール裏で巨大なフラッグや横断幕を掲げるファンたちは、チームを「ブランド」ではなく「家族」の一員としてとらえている。AFPが取材に訪れた際、ショッツは地元のライバルクラブ「ウォキングFC(Woking FC)」との一戦を迎えていた。これら2チームは現在、プレミアよりも4段階下の5部に相当するリーグに所属している。

 チームの熱狂的なサポーターたちが集まっているのは通称イーストスタンドと呼ばれる立見席。「ロックンロール・スティーブ」や「エルビス」といった変わった名前のサポーターグループがリードする応援では、90分間飛び跳ね、チャントを送り、粗野な応援歌を歌い続ける。グループドラム担当のベン・ブランデルさんはハーフタイム中にこう語った。「アルダーショットを応援するのはトロフイーのためじゃない。チームとの一体感、必要とされていると感じるからなんだ。自分もファミリーの一員なんだってね」

 ショッツのアンディ・スコット(Andy Scott)監督は「入場客が少ないときは全員が顔見知りという状態。同じパブで飲み、同じ場所で応援している。団結して声を合わせることで一つになる」と語った。

 そして時に、固い絆で結ばれたサポーターたちは、どんな悲しみも皆で分かち合う。

 イーストスタンドで熱狂的な声援を送っていたサポーターの一人で、かつて湾岸戦争(Gulf War)に従軍した経験を持つ退役軍人のスティーブ・チャップマンさんは、2011年のクリスマス直後に自らの命を絶った。彼の死を悼み、次のホームゲームでは、1分間の黙とうが捧げられた。イーストスタンドの同志たちは、普段は人気選手に向かって歌われる応援歌にチャップマンさんの名前を当てはめて歌い上げた。

 これまでに亡くなったショッツの選手たちのために、メーンスタンド裏に設けられた手入れの行き届いた庭のには、チャップマンさんに向けた胸にしみるメッセージを今でも目にする。

 グローバリゼーションの荒波や、プレミアリーグの圧倒的な人気の影響を受け、英国では多くの小規模クラブが存続の危機に直面している。ショッツも昨年、コンピューター関連の事業で財を成した地元の実業家シャヒード・アジーム(Shahid Azeem)氏率いるコンソーシアムに買収されることで、どうにか倒産の危機を脱した。しかし、5部以下のサッカークラブでは過去5年間で合計7チームが、管財団体の下に経営が置かれたり、解散に追い込まれたりしている。