【12月3日 AFP】3年前にモロッコの砂漠に落下した火星由来とみられる隕石(いんせき)を分析した結果、生命が残した可能性が高い炭素の痕跡を発見したとする研究論文が、2日に米科学誌「Meteoritics and Planetary Science(隕石学と惑星科学)」で発表された。

 スイス連邦工科大学ローザンヌ校(Ecole Polytechnique Federale de LausanneEPFL)率いる国際研究チームは、隕石のひびを詳細に調査し、「特異な」炭素の痕跡の存在を明らかにした。EPFLは声明の中で、この炭素は「生物起源である可能性が非常に高い」と指摘している。

 EPFLの地球惑星科学研究所(Earth and Planetary Sciences Laboratory)のフィリップ・ジレ(Philippe Gillet)所長は「今のところ、これ以上に説得力があると思われる説は他に存在しない」と付け加えた。

「ティシント(Tissint)」と命名されたこの隕石は2011年7月18日、地球に落下する様子が複数の目撃者によって確認された。

 ティシントは火星由来とみられている数少ない隕石の一つで、小惑星の衝突によって火星表面からはじき飛ばされ、宇宙空間をさまよった後に地球に着地したと考えられている。

 論文は、ティシントの「母岩」に、生物起源の炭素化合物を含む液体が低温で浸潤したと論じた上で、隕石のひびの中には現在も炭素化合物の同位体の痕跡が残っていると示唆している。

 このことを裏付ける証拠は、隕石に含まれる炭素化合物の炭素13と炭素12の同位体比率にある。この比率は、地球上の岩では、生物源に由来する石炭の同位体比率と一致するという。

 ジレ所長は「確実さを強く主張することは、特にこのようなデリケートな話題に関しては賢明ではない」「私は、他の研究でわれわれの研究結果と矛盾する結果が出る可能性もあることを、完全に受け入れる準備はできている」と認めた上で、「だがわれわれの結論は、生物活動が火星上に、少なくとも過去には存在した可能性に関する議論を再燃させるに違いないものだ」と語っている。(c)AFP