【11月27日 AFP】国家元首夫妻への称賛の言葉が歌詞となっているポップ調の曲の動画が中国で話題になっている──この曲で称えられている習近平(Xi Jinping)国家主席夫妻と一党独裁の中国共産党にとっては、まるで一足早くクリスマスが訪れたかのようだ。

 中国共産党が、習氏の「人民の味方」とのイメージに磨きをかけようと模索するなかで登場した楽しげな曲「Uncle Xi loves Mother Peng」では、彭麗媛(Peng Liyuan)夫人との「伝説的な」ロマンスがテーマとして歌われている。仲の良い様子を捉えた習夫妻のイメージがふんだんに使われたこの動画は、中国の動画共有サイトの一つに投稿され、これを国営メディアが積極的に報じている。

 中国共産党を批判するコメントをネット上から削除する同国において、この動画はプロパガンダの道具としてうってつけだったようだ。そのことを裏付けるかのように、先週の動画再生回数は1億2500万回以上を数えた。

 この曲を作曲し、ボーカルを担当した余潤沢(Yu Runze)さんは、「夫妻の写真をたくさん見ているうちに、彼らの話は良いラブソングになると思った」とAFPに語っている。この曲の子どもっぽい無邪気な歌詞には、中国共産党が「極めて敏感な話題」とみなしている習夫妻の関係について、否定的に解釈される余地は全くない。

 ただ一部のネット利用者らは、中国中部出身のミュージシャン2人が制作したこの曲について、毛沢東(Mao Zedong)初代国家主席の個人崇拝を思い出させるものとコメント。なかには「男性たちは習叔父から学び、女性たちは彭母さんから学ぶべきだ」といった歌詞を含むこの曲に同調できないとする声も聞かれる。

 中国版ツイッターの新浪微博(Sina Weibo)には、「北朝鮮にいるみたいだ」といった意見や、毛沢東の地位が異常に高められた1960年代以降の10年間に言及しながら、「文化革命(Cultural Revolution)に対する狂信的な空気(と同じ)だ」といったコメントが寄せられている。

 しかし作曲した余さんは、この曲は政治的なものではないと主張しており、「政治については何も知らない」、「音楽家としてみんなが好むものをこの世に送り出しているだけ」と語っている。

 この動画は、http://v.qq.com/cover/u/u74vgyfkwz6rqt8.html?vid=b01414l3kd7で視聴可能。(c)AFP/Benjamin HAAS