【11月26日 AFP】腐敗した動物の死骸を食べるコンドル(ハゲタカ)はなぜ食中毒にならないのかという動物界の長年の謎を解明したとする研究論文が25日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)で発表された。その理由は、特殊な消化器系にあるという。

 コンドルは腐敗した動物の死骸をついばみ、骨のみになるまで食べ尽くす。死骸の皮が硬く、くちばしで穴を開けることができない場合は、ちゅうちょなく肛門に口を突っ込み、はらわたをむさぼる。

 コンドルは死肉をあさる際、炭疽(たんそ)菌やクロストリジウム菌などの病原菌や毒素に身をさらすことになる。他の動物がこれらにさらされれば、病気になったり死に至ったりするだろう。

 デンマークと米国の科学者チームが発表した論文によると、コンドルがそうならない秘密は、その特異な消化器系にある。数百万年に及ぶ進化で磨き抜かれたコンドルの消化管は、のみ込んだ有害な細菌の大半を殺し、残った細菌と問題なく共存することができるのだという。

 研究チームは、アメリカ大陸に生息するクロコンドル(学名:Coragyps atratus)26羽とヒメコンドル(学名:Cathartes aura)24羽の計50羽の体に存在する細菌群のDNA特性を調査。その結果、コンドルの顔の皮膚から採取したサンプルは、528種類もの多種多様な細菌が存在することを示した一方、腸内には76種しか生存していないことが分かった。

 デンマーク・コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)のマイケル・ロゲンバック(Michael Roggenbuck)氏は「コンドルが摂取する有毒細菌への対処について、体内で強力な(進化による)適応が起きたことを、われわれの研究結果は示している」と語る。

「コンドルは、体内に取り込んだ危険な細菌の大半を死滅させる役割を果たす極めて頑強な消化器系を発達させる一方で、致死性細菌の一部への耐性も同時に発達させたとみられる。他の動物を死に至らしめると思われる細菌種が、コンドルの腸管下部で活発に活動しているようだ」(c)AFP